
近年、マンション管理をめぐるトラブルが増え続けている。背景にあるのは、住人の高齢化や多国籍化による価値観の多様化などだ。集合住宅がゆえに、人間関係の悪化は住み心地の悪さに直結する。何が起きているのか。
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「多いときは一日に2、3回、管理人から連絡を受けてトラブル対応などを行っていました。管理室から自宅のインターホンに連絡が入るんです。『理事長、至急、管理室に来てもらえませんか?』って」
こう話すのは、首都圏にある総戸数400戸のタワーマンションで管理組合の理事長を務めた経験を持つ竹中信勝さんだ。その当時の体験を『タワマン理事長――ある電通マンの記録』として、今年書籍にまとめた人物でもある。
「理事長になるまで、恥ずかしながらマンション管理組合の総会に出席したことも、毎月開かれる理事会の議事録に目を通したこともありませんでした。だから、理事長になってからタワマンの管理について学ぼうとネットで検索しましたが、タワマンの管理に関する情報はほとんど出てこなかった。コロナ禍が重なったこともあって、すべてが手探りでした」
「立ち会いが必要なんです」
当時は“電通マン”だったが、コロナ禍で在宅勤務になったことから、理事長としてタワマン管理に奔走することになったという。
「あるときは住人からの『不審者がいた』という通報を受けて、管理室から『一緒に防犯カメラの映像をチェックしてほしい』と頼まれ、たくさんあるカメラの映像を早回ししながら長時間見続けました。実際に管理業務を担うのは委託先である管理会社ですが、管理責任は発注者である管理組合にある。だから、映像をチェックするのも、組合の代表者などの立ち会いが必要なんです」
マンション購入者ならば、ご存じだろうが、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)では、すべての購入者にそのマンションの管理組合への加入が義務づけられている。マンションを買った瞬間に、自動的に組合員になるのだ。