
元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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ルワンダは小さな国だ。四国を一回り大きくしたくらいでアフリカ大陸の地図の中では豆粒のよう。でも日本でルワンダの名を知らぬ人がほぼいないのは100日で80万人が殺されたジェノサイドの影響が大きいのではなかろうか。
私も正直そのイメージしかなかったので、現地へ行き最初に何が驚いたって、その平和な穏やかさだった。首都キガリはビルと緑が調和した美しい大都会で、人々は皆優しく、わずか30年前にナタで殺された死体があちこちに放置されていたとは想像もつかない。実際、ルワンダは今やアフリカで最も安全な旅行先として人気である。
こうなると逆に、そんなことが本当に起きたことが信じられなくなってきて、全く遅まきながら、帰国後にジェノサイド関連の本や情報を読みまくることとなった。
感想をひとことで言うならば、あの凄惨なジェノサイドは全く「他人事じゃないんじゃないか」ということだ。