「ホイップクリーム渋滞」 ぬいぐるみ作家 ICCHIさん イッチー/杉野ドレスメーカー学院を卒業後、アパレルのデザイナーを務める。約10年前、インテリアになじむぬいぐるみを作り始める。現在は専業の作家。9月、北海道・江別蔦屋書店でフェア開催(写真:本人提供)
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 ぬいぐるみと日常を過ごす活動「ぬい活」。外出時のお供として、堂々とぬいぐるみを持ち歩き、その一コマをSNSに投稿する大人たちがいる。「ぬい活ブーム」の背景とは。AERA 2025年5月26日号より。

【写真】東京・原宿のおもちゃやSPIRAL。何百点ものアメリカンビンテージのぬいぐるみが並ぶ

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 大人がぬいぐるみを持つことは、おしゃれでもある。

 お出かけ用のバッグに、ぬいぐるみを付けて歩く。こんな大人を目にする機会が増えた。大人のシンプルな装いに、手のひら大のぬいぐるみが「個性」を与える。ロエベやミュウミュウなどが、クマや犬など動物のぬいぐるみのチャームをこぞって販売している。

 インスタグラムのフォロワー7.6万人の人気ぬいぐるみ作家ICCHI(イッチー)さんも「ここ2年、キーホルダーのぬいぐるみが20、30代に人気です」と話す。

 この現象は、古くからのぬいぐるみ好きに留まらないとICCHIさんは言う。

「推しを応援するために買った『推しぬい』をきっかけに、ぬいぐるみがそばにいることが自然になった人は多いと思います」

 たしかにBTSメンバーがデザインしたキャラクター「BT21」が2017年に登場し、ぬいぐるみも人気になった。今ではアイドルたちが、自身をデフォルメしたぬいぐるみを公式グッズとして売り出している。推し活をきっかけに、別のモチーフのぬいぐるみにも興味を持つというわけだ。

 ×パン、ほのぼのしたスーパーマッチョ……ICCHIさんのぬいぐるみは、意外な組み合わせがモチーフだ。

「猫のほうが小さくてパンの方が大きい、あり得ない非現実的で、シュールだから、笑えるんじゃないかと思います。そういうところから物語が生まれるんじゃないでしょうか」(ICCHIさん)

東京・原宿のおもちゃやSPIRAL。何百点ものアメリカンビンテージのぬいぐるみが並ぶ(撮影:倉田貴志)

怖さがかっこよさでも

 人々が求めるぬいぐるみは、単なる「かわいい」の枠に収まらない。東京・原宿の「おもちゃやSPIRAL」には、アメリカンビンテージのぬいぐるみが所狭しと並ぶ。

 ガーフィールド、アルフ、E.T.、マイペットモンスターなど。1980~90年代のドラマや映画のキャラクターのぬいぐるみで、愛らしいとは言い難い。ここに20~30代が「何かかわいいぬいぐるみはないかな」と訪れる。オーナーの高橋香代子さんは言う。

東京・原宿のおもちゃやSPIRAL。何百点ものアメリカンビンテージのぬいぐるみが並ぶ(撮影:倉田貴志)
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