
現代美術界も注目
同社が個人のソフビ制作に対応しはじめたのは2000年前後から。費用は生産数にもよるが、指人形ほどの大きさで金型製作、成型や加工まで含めて約30万円。22センチほどのサイズで60万から100万円ほど。決して安価ではないが、
「ここ数年は依頼が数十倍になりブームを実感しています。日本で金型から製造できる会社はうちを含めて3社しかありません。よりクオリティーの高いものを目指す作家さんに利用していただいています」(上條さん)
その一人が「SOFVI is ART !?」出品作家でもある岡田悠助さん(37)だ。ゴーヤをモチーフにした代表作「ゴーヤ怪獣」で知られ、ファッションブランドSEVESKIG(セヴシグ)とコラボした「ジャングル大帝」のソフビなども制作している。
岡田さんはもともと特殊メイク・造形工房「自由廊」のスタッフとして特殊メイクや造形を担当してきた。仕事でソフビ制作に関わり、そのおもしろさに目覚めたという。
「普段は工房で超リアルなものやホラーなものを作っていたのですが、ソフビが生み出すちょっと可愛くてデフォルメされた形状に惹かれました」
それまで使用していたレジン(樹脂)に比べ壊れにくいこともポイントだった。
「可愛い」しか作れない
コロナ禍で仕事がストップしたことを機に21年からソフビ制作をはじめ、24年に造形作家として独立した。粘土や3Dプリンターで原型を製作し、カミジョーに金型製造と成型を依頼。塗装はすべて自身で行う。一点物の作品だけでなく、150体を製造した「ジャングル大帝」のレオも2カ月かけてひとつひとつ塗装した。無色透明な塗料を何層も重ねることで艶を出し、陶器やチタンの質感なども出すことができるという。
「ソフビは金型の隅々にまで液体を行き渡らせて引っこ抜くため、鋭利な形状はできないなど独特の制約があります。それゆえにどこか丸っこく、ふんわりした味わいが生まれる。怪獣のような怖いキャラクターでもぜったいに可愛くならざるを得ない。そこが魅力ですね」(岡田さん)
海外でも「ソフビ」人気は高まっている。アルゼンチン出身のセーサル・サナルディさん(44)はもともとイラストレーター&デザイナーだった。2011年から東京ビッグサイトで開催されるアートイベント「デザインフェスタ」に参加。ソフビと出合い、魅力の虜になった。3年前に妻子と日本に移住し、ソフビ作家として活動している。
