
今どきの若手社員に浸透しつつある「ゆる転職活動」。その背景には何があるのか。入社月の4月に転職サイトに登録した新社会人の数を毎年集計している、転職サービス「doda」の桜井貴史編集長に実態と要因を聞いた。
【過去最高!】4月に新社会人が転職サイトに登録した件数はこちら
入社月の4月に「まずは転職サービスにアクセスしよう」
入社間もない時期に転職サイトに登録する新社会人が急増している。
パーソルキャリア(東京都港区)が運営する転職サービス「doda」は2011年以降、入社月の4月に転職サイトに登録した新社会人の数を集計している。それによると、25年4月は11年比で30倍を超え、過去最高水準になる見通しだという。この現象、いったい何が原因で起きているのか。
「自分の市場価値に敏感で成長意欲が強い若い世代を中心に就労マインドや転職に対するイメージの変化が起き、『まずは転職サービスにアクセスしよう』という動きが広がったと考えています」
こう話すのは、dodaの桜井貴史編集長だ。
同サービスが転職の変化を察知したのは2016年ごろ。スマートフォンの普及率と連動するように、「特に新社会人の相談が増えている」と転職支援の現場でも感じられるようになったという。
「従来はパソコンで転職サイトを閲覧していたのが、スマホで登録も内容チェックもでき、SNSを通じてさまざまな転職情報をつかめるようになりました。こうしたデバイスの進化が若手の転職活動に、より顕著な影響を及ぼしたと考えています」

20代前半の6割が「転職を機に昇進しやすい」
就労マインドの変化については、パーソル総研が実施している20代前半の社員の仕事観に関する調査結果からもうかがえる。仕事を選ぶ上で重視する点として、「自分のやりたい仕事であること」や「キャリアを活かせること」が19年から25年にかけて上昇傾向にあるという。
また、「転職を機に昇進、昇格がしやすい」と回答した20代前半は25年で約6割。若い世代ほど転職をポジティブに捉える傾向も浮かんだ。桜井さんは言う。
「今の若手は『この会社で自分の成長を実感できるか』や、『成長のタイパ(タイムパフォーマンス)が良いか』という点を重視しています。自分のスキルや市場価値を高める手段をより早く、より多く身につけておきたい意識に加え、自分のキャリアの価値を明確化したいニーズも高まっています」
だとしても、社会人になったばかりの4月に転職サイトに登録するのは余りに性急ではないか。その疑問に対する桜井さんの回答に思わず脱力した。