「最初のスラストスピンがちょっと倒れてしまったところで、成功したという気持ちになれず、そのままずっといってしまったかなという感じです」

 比嘉がソロのエレメンツに取り組み始めたのは2月後半、ルーティンを泳ぎ始めたのは3月半ばだという。ワールドカップ・カナダ大会について、比嘉は「やはりジュニアのように甘くはないなというのを実感しました」と振り返る。

「ジュニアの時は短期間の練習でも上位をとることが出来たんですけど、やはりシニアの戦いになってくると、自分の体のパーツの細かいところまでしっかり扱っていかないと。細かい部分までこだわっていく選手がソロをやっていくと思うので、私もそういうところをしっかり見習って。水中の見えないところから整理していって、もっと綺麗でスムーズな、流れるようなソロを泳げるようになりたい」

 所属クラブも比嘉と同じ井村ASクラブである宮川コーチは、比嘉のソロについて「泳ぎがまだ安定していない」と分析した。

「彼女らしさが、まだ出せないので。(世界選手権まで)あと二カ月、もうちょっと練り直したいと思っています」

「輝夜姫~Light of the soul」は、ASがシンクロナイズドスイミングと呼ばれていた時代からヘッドコーチとして日本代表を鍛え上げてきた名伯楽、井村雅代氏が振り付けた。主宰する井村ASクラブに所属する比嘉と宮川HCのため、東儀氏や振付家の舘形比呂一氏を招聘。2023年世界選手権でソロ2種目連覇を果たした乾友紀子のルーティン作りに携わった豪華なスタッフの力を再び借りることで、ソリスト・比嘉の世界デビューを後押しした。

 比嘉の演技について、井村氏は「私の思っていた演技と違う」とコメントした。井村氏は、華があると評価する比嘉に「世界でトップの選手になってもらいたい」と期待をかける。「曲を“聞く”んじゃなくて“感じて”泳ぎなさい」と指導してきたものの、まだ「曲に対する取り組みが甘い」と指摘した。

次のページ 「私には日本を背負っている責任がある」