「プラチナNISA」が老後の資産形成に有効な仕組みになるかは未知数だ(photo gettyimages)
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 投資による運用益が非課税になる新NISA(少額投資非課税制度)について、高齢者を対象とした「プラチナNISA」の創設が取りざたされている。だが構想段階にもかかわらず、すでに市場関係者の評価は低い。しかも、似たような毎月分配の仕組みはすでに民間の証券会社でも始めている。

【チャート】ほかにもこんなことが進言されていた!「資産運用立国2.0」の提言はこちら

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 在任中は支持率が低迷して不名誉なあだ名までつけられることがあったものの、「資産運用立国」構想を掲げて制度の大幅見直しを指示し、新NISA誕生の立役者となったのが岸田文雄前首相。この構想は、著しく預貯金に偏重している個人の金融資産を投資にシフトさせ、資金を得た企業が利益成長を遂げることで日本経済が活性化し、所得の伸びなどを通じて家計にも恩恵が及ぶという好循環を促すのが狙いだ。

 トップの座を譲り渡した後、しばらく岸田氏は表立った行動を取っていなかったが、同氏が会長を務める自民党内の資産運用立国議員連盟は4月、「資産運用立国2.0に向けた提言」を石破茂首相に提出した。そのタイトルからもおおよその想像がつくように、「資産運用立国」構想をさらに推進するため、その第2弾(2.0)となる具体的プランの策定を求めたものだ。

 同提言書では、公的年金を補完する役割を担う企業型確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額引き上げをはじめとする制度改革からスタートアップ(未上場ベンチャー企業)への投資促進まで、多岐にわたる施策が提案されていた。その中でも世間が最も高い関心を示したのは、NISAのさらなる制度改正・拡充について進言したものだったと言えよう。

 提言の内容が明るみになると、主要マスコミはもっぱらNISAに関する改正・拡充プランについて盛んに報じた。その一つが「プラチナNISA」の創設で、もう一つは現行の「つみたて投資枠」を「こども支援NISA」にバージョンアップさせるというものだ(どちらも現段階では仮称)。

専門家も首を傾げる内容の改正・拡充構想

 これらのプランはあくまで提言に盛り込まれたものにすぎず、それを受け取った際に石破首相は、「政府としてもみなさまと連携をとりながら推進に努めていく」という曖昧なコメントしか述べていない。とはいえ、提言を受けて金融庁が「プラチナNISA」を創設する検討に入ったとの報道も出ている。

 この「プラチナNISA」とは、65歳以上の日本在住者を対象とする制度だ。そういった世代の間では、公的年金だけでは足りない分を預貯金や運用資産から少しずつ取り崩していきたいというニーズが存在することに着目し、現行のNISAでは除外されている毎月分配型の投資信託も選択肢に加えることを制度の柱としている。

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