春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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 人気落語家・春風亭一之輔さんの新刊『ドグラ・まくら』(朝日新聞出版)が5月9日に発売される。お題に応えて、日々のよしなしごとをつづった珠玉のエッセイだ。「AERA DIGITAL」で連載中の一之輔さんのコラム「ああ、それ私よく知ってます。」から、編集部が選ぶイチオシ回をお届けする(この記事は「AERA dot.」に2025年3月2日に掲載されたものの再配信です。本文中の年齢、肩書等は当時のもの)。

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 落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「合格発表」。

 高3の春、大学受験に見事に落ちて浪人することになった。当たり前だ。まったく勉強してなかったんだから。すでに落語にハマっていたので「落語家になっちゃおうかなー」なんて軽い気持ちで親に告げるとやっぱり反対され「そりゃそうだよなー」なんて思いながら、諭されるままに予備校に通うこととなった。

 浪人中、ほぼ勉強しかしなかった。今まであまりにやらなさ過ぎた反動か、勉強が楽しくて仕方がない。予備校のクラス内での成績もよく、偏差値がドンドン上がっていく。浪人もなかなかいいもんだ。親からすればたまったもんじゃないだろうけど。

単調ながらも心地よい生活

 高校時代の一番の友だちは推薦で私大に現役合格し、4月から大学生活を送っていた。私は実家、彼は上京し生活圏も遠くなったので直接会うことはなくなったが、ちょこちょこ連絡を取り合い、サークルに入って彼女が出来た、なんてことを聞いたりして。「大学というところはなんて夢のようなところなんだろう!」と羨ましくもあったが、毎日受験勉強だけする生活にも慣れきった自分は大学に入ることによってこの単調ながらも心地よい生活サイクルが崩れるのが怖くもあった。

 ずーっと受験生もなかなか悪くないんじゃないか、とか思ってた。ひどいな。全浪人生、浪人生を子に持つ全親に謝りたい。

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