コンサートの最後に、この「中森明菜 Tribute Concert ”明響“」にはテレビの収録カメラが入っており、NHKBSの人気音楽番組「The Covers」で放送予定 だと公表された。ネタバレのないように、コンサートの内容そのものは、ここでは詳述しないが、アンコールは総立ちの大盛り上がりだった。

 この日のシークレットゲストは韓国出身DJ&音楽プロデューサーのNight Tempoと元モーニング娘。の後藤真希。ゴマキは、真っ赤なワンピースで中森明菜の13枚目のシングル「SOLITUDE」を披露した。杉山清貴と一青窈がコラボして「北ウイング」、星屑スキャットによる「TATTOO」、そして本編ラストは一青窈による「1/2の神話」 と、デビュー記念日のお祝いムードが最高潮に達していた。

 中森明菜ではない他のアーティストたちが歌うことで、中森明菜の楽曲そのものの“厚み”を満喫できた。

アンコールのそのとき

 そして、ステージは一旦、暗転し、アンコールの声が沸き起こった。この日の出演者が、全員登壇し、それぞれ、中森明菜への思いや感想を述べた。会場内の“誰か”を探すように、ナビゲート役のミッツ・マングローブの目が泳いだ。すると、上手側のバルコニー席にスポットライトが! ゆるいウエーブのかかった肩までの黒髪、水色のふんわりニットを着た中森明菜がそこにはいた。

 全く予期していなかった本物の中森明菜を目の前にして、驚いたというより、体が数センチ持ち上がったと錯覚するくらいの衝撃だった。中森明菜が纏う水色のニットがスポットライトでキラキラと光って、妖精が降臨したみたいだった。

  当然、会場は地響きのようにどよめき、歓声が湧いた 。バルコニー席の中森明菜に向かって、ミッツ・マングローブがトリビュートコンサートの感想を聞くと、ゲストの歌唱が素晴らしかったために「反省しまくりです……」と、消え入りそうな声で話した。明菜流のちょっぴり自虐的なお茶目な返しで、トリビュートしてくれた出演アーティストたちを称えたのだろう。客席に向けて両手で投げキスを2回、近くの席のファンには握手をしたり、まさかのビッグサプライズだった。

 

 バルコニー席から降りてきて、舞台に上がってくれないか……と思ったが、それはかなわず。しかし、自身がステージに上がらなかったのは、トリビュートしてくれたアーティストたちが“主役”と中森明菜は考えたのではないかと感じた。

 中森明菜の楽曲をリスペクトして集まったアーティストたちと、中森明菜を愛するファンが、まさにアルバムタイトル「明響」通り、明菜とともに響き合った素敵なデビュー記念日だった。

(AERA編集部・太田裕子)

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