
調査では、「じいじ」「ばあば」と言うことがあると回答した人は約24%。コラムでは「国民の4人に1人はこの表現を使っていることが推測されます。多数派ではありませんが、現在一定の勢力を持っていることが分かります」としている。
16年前の調査で、すでに全体の4分の1。現在はどうか。「間違いなく、もっと多い」がほとんどの人の体感ではないか。同研究所教授の石黒圭さん(56)も、「何のエビデンスもなく、体感ですが」と前置きしたうえでこう話す。
「おそらくお孫さんが低年齢、小学生くらいまでの家庭では『じいじ ばあば』が半数を超えているんじゃないかという気がします」
なぜ、この呼び方が広まったのか。石黒教授は「『じいじ ばあば』は『パパ ママ』の延長線上にあるもの」だと見る。
「おじいちゃん おばあちゃん」は自分の祖父母に対して使う以外に、他人であっても上の年代に対して使うことがある言葉だ。たとえば近所の高齢者を「隣のおじいちゃんがさあ」と第三者的に語ることがあるように。同じく、町を歩いている中高年に「お父さん お母さん」と知らない人が呼びかけるシチュエーションも、なくはないだろう。
「それに対して、『パパ ママ』は自分の家庭内でしか使えない言葉です。私が見知らぬ人に『パパ』『ママ』と話しかけることはまずない。同様に私が『隣のじいじがね』と語ることもない。そういった『家庭内だけで閉ざされた、第三者に転用されない言葉』が求められていて、それがおそらく、『じいじ ばあば』として定着したのでは」
「おじいちゃん おばあちゃん」は、上の世代を指す名称として浸透し、「社会化」されている。ではなぜ、社会化された言葉よりも「閉ざされた言葉」が求められるのか。
「『じいじ ばあば』は、『パパ ママ』同様、密な家庭のその関係の中だけで、特別に孫や子に呼んでもらえる名前。その点が大きいのではないでしょうか」
そして「じいじ ばあば」を嫌う人が一定数存在する理由もそこにあると、石黒教授は言う。
「『パパ ママ』も『じいじ ばあば』も、『お父さん お母さん』や『おじいちゃん おばあちゃん』に比べると、より愛称に近い感じがしますよね。距離がとても近く、ご本人にとっては孫との一体感みたいなものを感じられて嬉しいんでしょうけど、それを聞かされる側は家庭内の『距離の近さ』をもろに見せられているようで恥ずかしいし、『そんなもの、社会的に見せるものじゃない』というような感覚をもってしまうのでは」