吉田監督は「これからというときに」と頭を抱えたが、ここから一気にドラマはエンディングを迎える。グリーンウェルはその日のうちに三好一彦球団社長との会談を希望し、「足のけがは“野球を終われ”という神のお告げだと感じた。これからは家族と過ごしていく」と退団を申し入れた。
これに対し、三好社長も「彼の気持ちを汲み、意思を尊重した」とすんなり退団を認めた。すでに富も名誉も十分手にしていたグリーンウェルが来日したのは、「本当に野球がしたい」という動機からだと信じ、引退も「彼のプライドの高さゆえ」と理解したからだという(2015年12月3日付産経WEST)。グリーンウェルも退団に際し、「5月以降の金は要らない」と辞退したが、球団側は3ヵ月分をプラスし、年俸の約6割を支払うことで円満にことを収めた。
あれから28年。「嵐のように来て、嵐のように去っていった。つむじ風のような男だった」という吉田監督の名セリフとともに、当時流行った「GWだけ来て帰ったGW(グリーンウェル)」のキャッチコピーを懐かしく思い出すファンも多いことだろう。
(文・久保田龍雄)