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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 GWが明け、5月中旬は日本企業の決算発表が集中するシーズン。この会社の株は買うべきなのか? それを見抜く方法を、グロービス経営大学院教授の佐伯良隆氏が解説します(佐伯良隆著『決算書「分析」超入門2025』から抜粋・編集)。

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数値の伸びだけではなく、成長した“背景”にも目を向ける

 成長性の分析では、売上や利益が「どれだけ成長したか」だけでなく「なぜ成長できたのか」、その要因を探ることも大切です。

 会社の成長要因(成長ドライバー)には、大きく「外部要因」と「内部要因」の2つがあります。成長した理由が、会社の“外”にあるか、“内”にあるかの違いです。

 外部要因の代表的な例は、国の経済政策や景気動向などです。それ以外には、業界特有の需給サイクル(例:4年周期で買い替えられる家電製品など)や特需景気(例:コロナ禍のテレワーク急増でPCの売上が伸びる)なども外部要因といえるでしょう。

 一方、内部要因は、会社の経営努力の賜物。例えば、新製品投入や、新事業の展開などによる売上の増加が考えられます。

 このように会社の成長要因にまで目を向けるべきなのは、「数値の大きさ」に惑わされないためです。

 例えば、「A社の売上は前年比20%増」という数値だけみれば、大きく成長しているように思えますが、「業界平均が前年比30%増」だったらどうでしょう。A社はむしろ「低成長な会社」といえますよね。

 子どもの身長も同学年で比較するのと同じように、会社の成長もまずは同じ業種で比較してみましょう。

売上の増減から「成長性」をチェック

 では、決算書から会社の成長性を測る具体的な方法をみていきましょう。

 まず調べたいのは「会社の身体能力があがっているかどうか」です。そのためには、損益計算書をみて運動量(売上)と成果(利益)が伸びているかを確認します。

 運動量が増えているかどうかは、「売上高増加率」を出すことで判断できます。これは「前期に比べて売上がどれだけ増加したか」を表す指標で、例えば前期の売上が1億円で、当期の売上が1億1000万円だとすれば、売上高増加率は10%になります。

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