
職場でのセクハラや性被害が報じられ、許されないことである認識は急速に広がっている。一方で報道する側のマスメディアでは、長く続く男性中心の環境で働く女性が日常的にセクハラの被害に遭っていた。AERA 2025年5月5日-5月12日合併号より。
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「抱きつかれるぐらいのことはあるだろう、と考えていた」
都内に住む40代前半の女性は、新聞社に勤務していた頃に何度かセクハラに遭った。先輩の男性記者と飲んだ帰りに抱きつかれた時には「帰ります」と伝えるのがやっと。なんとか、通りかかったタクシーに逃げ込んだ。
飲み会帰りに別の先輩から「送ってあげて」と酔った取材相手とタクシーに乗せられたこともあった。車内で取材相手から手を握られた。こういうことが起こり得ると分かっているのに同乗させられたのだろうと感じた。
学生の頃に見ていたテレビドラマでは、女性はセクハラまがいのことをされるのが当たり前。「珍しいことじゃない」と思い込んでいた。
セクハラの被害者らが自身の経験を告白する「#MeToo」運動が起き、この10年ほどで、社会の状況は変わった。それなのに、社内では似たようなセクハラが起きていることを知った。「私が軽く考えていたせいで、同じようなことが繰り返されていたのでは」とモヤモヤしつつ、自分を責めるのも違うのではないかと感じた。「責められるべきはどちらなのだろう、と」
女性はかつてを振り返って、「20~30代は常に忙しくて体調が悪かった。ちゃんとした判断ができない働き方をさせられていた」と話す。