
「減税合戦になってきた。どの党の減税が有権者に支援されるのかわからない」
と苦笑するのは、自民党の幹部だ。
立憲民主党の野田佳彦代表は4月25日、夏の参院選の公約に「1年間、食料品の消費税ゼロ%」を盛り込むことを明らかにした。
野田氏は2012年の民主党政権時代、自らが首相のときに、社会保障費を確保するため消費税を増税する「社会保障と税の一体改革」を進めた過去がある。25日の会見で野田氏はそれを念頭に、
「私は『社会保障と税の一体改革』を推進した、『ザ・当事者』であります。最終責任者であります」
と「消費増税」を進めたことを認めつつ、
「これまで将来世代を慮る政治を進めたが、今を生きる人たちの暮らしも大事。今は物価高だ。国難というべきトランプ関税の影響が世界経済に大きな影響を及ぼし、民のかまどから煙が消えてしまう可能性もありうる」
と、「消費減税」路線への転換を説明した。
立憲民主に迫っていた2つの危機
野田氏が代表になって以来、立憲民主党は「消費増税」のイメージが強かった。野田氏が選んだ小川淳也幹事長に至っては、かつて「消費税25%」とまで口にしていた。
野田氏はかねて党内で、
「減税というなら、なぜ俺を代表に選んだんだ」
「俺を代表から引きずり落としてから減税はやってくれ」
と主張していたことも伝わっている。
また、4月に入っても、「増税」では野田氏と同調する枝野幸男元代表は、
「減税というのは参院選目当てとしか言いようがない。減税ポピュリズムに走りたいなら別の党をつくってください」
と講演で述べ、減税派を牽制したこともある。
同党の衆院議員A氏は、こんな党内事情を明かす。
「立憲民主党は増税政党だと、地元でよく言われました。党内でもそんな空気感で、減税だと意見すると『お前は非主流、反体制か』と陰口をいわれる。野田氏を筆頭にうちの幹部はみんな増税ですから、1年間ではあるが食料品の消費税ゼロ%に踏み込んだことは驚きです。ただ、党には2つの危機が迫っていました。これまで通り増税路線を続けると党が割れてしまいかねないことと、人気の高い国民民主党に参院選で負けて野党の主導権を奪われかねないことです」