部活に打ち込む教員の声を聞いて

 前出のシゲルさんは、部活動に携わることについて、「自分は幸運だ」と語る。

「最初は嫌々」だった部活動顧問の仕事を愛するようになったからだ。教員になって間もなく、競技経験のない卓球の部活動顧問になった。「本来の業務ではない」とも思ったが、コーチングの本を頼りに部員を指導した。

「子どもたちは素直についてきてくれた。『こんなに練習してくれるのだったら、自分もいい加減にはできないぞ』『部活っていいなあ』と思うようになったんです」(シゲルさん)

 まずは区大会でベスト4入りを目指した。3年後には都大会出場を果たした。

「生徒の成長ぶりを目の当たりにして感動しました。やりがいを感じ、顧問として指導に注力するようになりました」(同)

部活動の時間は無駄ではない

「積極的に顧問をやりたい教員から部活動の指導を奪うことはやめてほしい」とシゲルさんは訴える。

「教員の負担軽減」の名のもとに、部活動をやりたくない教員の声ばかりが吸い上げられ、部活動顧問を希望する教員の声は拾われず、一律に部活動が縮小されてきたと感じているからだ。

「授業中は目立たなくても、部活の時間になると目を輝かせる生徒がいる。部活動が居場所になる生徒もいる。学校教育のなかで、部活動の時間は決して無駄ではないはずです」(同)

 全国では部活動を地域のクラブや団体などに移す取り組みが進んでいるが、シゲルさんは部活動に情熱を持つ教員や指導者と生徒が積極的に交わることのできる環境こそが大切だと考えている。

 本市や川崎市の調査を見てもわかるとおり、部活動顧問に関心のある教員は3~4割と決して少なくない。手当など、条件面が整備されれば、さらに増える可能性がある。

 希望する人間が適正な環境で部活動を指導する――。

 熊本市教委の取り組みは、今後の部活のあり方を探るうえで試金石になるだろう。

(AERA編集部・米倉昭仁)

[AERA最新号はこちら]