(写真はイメージ/写真映像部・和仁貢介)
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 部活動を巡って、教員も二分化している。やりがいを感じる教員、負荷に否定的な教員--。そんななか、本市は「希望する教員のみ」が部活動顧問を務める体制に移行する。取り組みは奏功するか。

【ココがヘンだよ】部活を丸投げ?「地域移行」の大問題【早わかり】

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手を抜く顧問が増えた

「『部活は本来の業務ではない』と、公然と口にする教員が増えました」

 卓球部の顧問を長年務める中学校教員のシゲルさん(仮名、50代、東京都)は、顧問を務める教員側の変化をしみじみ感じている。

 市区レベルから全国レベルまで大小さまざまな大会の運営には各校の顧問の協力が欠かせない。審判業務をはじめ、大会日程の調整、会場の手配や準備、試合プログラム作成など、運営業務は多岐にわたる。

 以前は、嫌々ながら顧問を引き受けたとしても、最低限の運営業務は遂行した。しかし、最近は明らかに手を抜く顧問が目立つようになった。

子どもにとっても不幸

 たとえば、試合プログラムを作成する際には、大会参加校から提出された選手のエントリーシートをもとに顧問会議で検討し、試合の組み合わせを決定する。

「会議はいい加減で、試合の組み合わせもめちゃめちゃです。本来なら、上位まで勝ち進んだら対戦する同じ学校の選手が2回戦で当たるようなプログラムが平気で組まれる。それを試合当日に生徒から指摘される、ということが起こっています」(シゲルさん)

 部活動に否定的な顧問が大会運営に関わることは、「負担でしかない」。生徒から苦情が寄せられたこともある。

「やる気のない教員が顧問になることは、子どもたちにとっても不幸なことだと思います」(同)

希望する教員のみで部活動を

 教員が二分化するなかで、新しい試みを始めたのが熊本市だ。

 2022年、国が「部活動の地域移行」に向けた方向性を示すと、熊本市教育委員会は同年12月に「熊本市部活動改革検討委員会」を立ち上げた。10回の審議を経て、今年3月27日、「熊本市立中学校における新しい学校部活動の在り方」の最終案を公表。地域移行はせずに、学校で部活動を継続する道を選んだ。

 同市教委の朽木篤・教育改革推進課長は語る。

「部活動には教育的意義があるので学校に残してほしい、という意見が検討委員会で多くあがった。『新しい部活動』の在り方を模索してきましたが、2年後をめどに部活動を『希望者のみが指導する体制』に移行することを決めました」

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