
死亡年齢の高齢化、葬式・墓の簡素化、家族関係の希薄化……、社会の変化とともに、死を取り巻く環境も大きく変化してきました。2000年以降、お葬式の参列者数は減少していきますが、変化の背景にあるのは、地域のつながりが薄れたことにあります。
この30年間、死生学の研究をしてきたシニア生活文化研究所代表理事の小谷みどりさんが、現代社会の「死」の捉え方を浮き彫りにする新刊、朝日選書『〈ひとり死〉時代の死生観』(朝日新聞出版)を発刊しました。同書から「お葬式の変化」を抜粋してお届けします。
【写真】小谷みどり氏の最新刊『〈ひとり死〉時代の死生観』はこちら
* * *
地域のつながりが薄れ、お葬式の参列者の数が減少
2000年以降、家族葬の急速な普及により、お葬式の参列者の数が減っている。
公正取引委員会が2005年に全国の葬儀業者に調査をしたところ、5年前と比較して「参列者が減少した」という業者は67・8%だったが、2016年には86・8%に増加している。
葬祭業者が、過去2年間にお葬式を出した遺族におこなった調査では、お葬式の平均参列者数は、2013年には78人だったが、2015年に67人、2017年には64人、2020年には55人、コロナ禍の2022年には38人となり、わずか10年間で参列者は半減している。
こうした変化の背景にあるのは、地域のつながりが薄れたことにある。戦前までのお葬式には、家督相続者である次の家長のお披露目をするという役割があり、結婚式と同様、「家の儀式」と考えられてきた。
そのため、誰が喪主を務めるかがとても大事だった。夫が亡くなった時、妻が存命であっても、息子が喪主をするのがかつては一般的だったのは、そのためだ。2005年に大相撲十一代二子山親方が亡くなった時、第一子である長男か、父親の仕事を継いだ次男のどちらが喪主をするかでもめたことがメディアで報道された。これも、お葬式は喪主である跡取りのお披露目であると考える人たちがいることの事例だろう。