炭本貴司さん(右)、炭本伸子さん(撮影:楠本 涼)
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 AERAの連載「はたらく夫婦カンケイ」では、ある共働き夫婦の出会いから結婚までの道のり、結婚後の家計や家事分担など、それぞれの視点から見た夫婦の関係を紹介します。AERA 2025年4月28日号では、茶農家・炭本家と寺子屋やぎやを営む炭本貴司さんと炭本伸子さん夫婦について取り上げました。

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夫33歳、妻30歳で結婚。夫の両親宅の隣に、長男(15)、次男(12)、長女(9)、白ヤギのや~ちゃん(7)と暮らす。

【出会いは?】職場の学習塾の同僚。「貴司のにおいや声が好きで、何となく心地良かった」(妻)、「しっかりしてるけど何か抜けてて放っておけない感じ」(夫)がして、出会いから半年後に付き合う。

【結婚までの道のりは?】交際開始から3年が経つ頃、夫の両親に呼び出されて結婚を問われた。妻は「したいと思ってます」、夫はお茶の仕事で生活できるのか不安もあってはっきりできなかったが「するんちゃうかな」と答えて話が進んだ。

【家事や家計の分担は?】家事はほぼ妻が担当。現在はお茶が収入の柱で、夫が問屋との取引分を、妻が直売分を担う。その中で妻が食費を払い、家計全般は夫の采配のもとで妻がやりくりする。

夫 炭本貴司[51]茶農家 炭本家/寺子屋やぎや

すみもと・たかし◆1973年、京都府出身。木津川市の瓶原(みかのはら)で生まれ育つ。大阪大学文学部卒業後、塾講師として働きながら茶農家の修業をする。結婚を機に独立し、日中は農業、夜に塾で週2日ほど働く。妻と一緒に「寺子屋やぎや」の運営と、地域住民による芸術祭を主催している

 初めは茶農家を一人でやるつもりでした。子育てが一段落した頃に伸子が興味を持ってくれて、今は二人で営んでいます。彼女は収穫時、茶葉を嗅いでは「いいにおい」と感動してて仕事が進まへん(笑)。

 作業の向き不向きはありますが、これまで問屋さんだけに売っていたお茶を、彼女が「やぎや」のお茶として商品化。直売店などで直接飲む人に売ってくれて感想を聞けるようになり、僕もお茶の良さを再認識できました。

 一緒にやると二人以上のものが作り出せるのは「寺子屋やぎや」も同じです。物件の契約時も彼女はひたすら思いの丈をしゃべり、具体的な手続きは僕が進める。補っている部分もあるし、僕にとっても新しい経験になって面白い。

 やぎやを拠点に芸術祭を開いたり、アーティストとの出会いを機にインドネシアの伝統音楽ガムランの楽団を立ち上げて共演したりと、まるで草が生えるように、人生の範囲が地域の人を含めて広がっています。今は地域全体が幸せになればいいなと思えます。

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