
最初は断った東大の選抜入試
当初は一般入試で東大を目指し猛勉強に励んだが、高校3年のある日、担任から学校推薦型選抜での受験を提案される。ただ、原田さんは当初、その話を断った。学校推薦型選抜は指定校推薦などとは違い、合格は狭き門だ。不合格になった場合、一般入試で再挑戦することになるが、両方の準備をする余力はなかった。さらに、これまでのトイレ研究での実績はクラウドファンディングや周囲の人のアドバイスなどによって得たものだ。その「成果」を個人の受験に活用していいか迷いがあったからだという。だが、最終的には学校推薦型選抜での受験にも挑戦した。
「学校推薦型の受験なら、経済学部の先生方に自分がやりたい研究について直接評価してもらえます。本当に研究できるのか、東大が最適なのか評価してもらいたくて、受験を決めました」
書類選考、学部教授3人による面接、そして大学入試共通テストを経て、22年、原田さんは東大に合格した。経済学部に進み、トイレの統計調査や設置監修を担う会社「UN&Co.(ウン・アンド・コー)」も設立した。いま取り組むのは産学官の連携だ。

「中学時代にデータを集めていたころから、街中のトイレ情報は行政がPDF化して公表しているくらいで、有効なデータとしてはほとんど活用されていません。だから、まずはそうした情報を集約化することに取り組んでいます。例えばフィルター検索で『車いす・男性』と調べると最寄りの公共トイレが表示される、そんなサービスを自社でつくっています。それにより、地域ごとの『トイレ格差』が見えてくるので、そのデータを基に大学で最適なトイレ配置について研究しています。さらに研究データを活用して、行政や施設に対してトイレの設置や改修を提案しています」
目指すのは、トイレの選択肢が増えた社会だ。とはいえ、トイレは究極のプライベート空間であることから、理想の形は人それぞれ違う。
「多機能トイレとオールジェンダートイレを一緒にしないでほしいという意見は多いですね。それでも、トイレが男性用・女性用の二つだけというのは選択肢が少なすぎます。第三の選択肢が必ずある社会を、まずは目指していきたいです」
(AERA編集部・川口穣)