
その年の暮れに教授は自殺していた
ところで、くだんの「美学」の授業は、厳しい授業として有名だった。「不可」の成績をつけられることもあるので、とらないほうがいいとキャンパスのガイド雑誌に書いてあった。私は「不可」でもしかたないと思って課題と違う「静」のことをメインにした感想文を書いたのだが、学期末の成績には「優」が付けられていた。
出した課題と違ったものがあがってきても、きちんと読んで評価をする、そういう人に自分はその後何度も救われることになる。
その教授坂崎乙郎が、私が授業をうけたその年の暮れに自殺していたことを知るのは、今回「上村松園」展の下調べをしている最中のことだ。
鴨居玲という洋画家が、1985年9月に自殺をしており、親友だった坂崎先生は後を追ったと横尾忠則が、書いていた。
坂崎乙郎と鴨居玲のことはまた別の話、別の機会に書くことがあるかもしれない。
※AERA 2025年4月21日号