2021年のオールスター戦でのファーストピッチセレモニー前にあいさつする高橋優斗

イベント目的の人のせいで野球ファンが入れない?

 DeNAはイベントを積極的に開催する球団として知られている。野球の魅力を知ってもらうため、様々な企画で新規のファンを取り組もうとする企業努力は評価されるべきだろう。過去にも相川七瀬、湘南乃風、KREVAなどの人気アーティストたちが試合後の横浜スタジアムでライブパフォーマンスを行っている。

 民放テレビ関係者は、「一昔前の横浜スタジアムはガラガラのスタンドが日常の風景でしたが、DeNAが親会社になってから様々なイベントを企画するようになり、観戦チケットの入手が困難になるほどの人気球団になりました。ただ、野球の試合がメインであるのに、試合を見ない人たちもいます。9日の試合は高橋さんのトークショーだけを観たい人たちが試合中からトークショー観覧の集合場所に押し掛け、スタンドに空席が目立ちました。そのためDeNAの試合を見たいファンが球場に入れないわけですから、本末転倒です」と指摘する。

 イベントの開催が決して否定されることではない。アーティストのライブを見たくて横浜スタジアムで試合を観戦して、DeNAファンになった人もいる。横浜市内に住む30代女性は「KREVAがハマスタ(横浜スタジアム)でライブをするというので、ベイスターズが好きな主人と球場で初めて観戦したら野球にハマってしまいました。昨年は10回以上観戦して、日本シリーズも観に行きました。神宮、東京ドームなどビジターで観戦する時がありますが、ハマスタが一番好きです。熱気が凄いですし、試合を含めて球場の雰囲気が楽しいです」と声を弾ませる。

 高橋のトークショーを楽しみに球場に訪れ、野球の楽しさを体感した来場客もいたはずだ。9日の試合は8回まで0-6とDeNAが巨人に投打で圧倒される展開だったが、9回裏に牧秀悟が右中間に3ランを放って球場のボルテージが一気に上がった。反撃及ばずDeNAは敗れたが、牧のアーチを見た人たちは良い思い出になっただろう。

「SNS上で一部の野球ファンが高橋さんのファンに嫌悪感を示していますが、ルールを守って球場で観戦していた方たちもたくさんいます。こういった形で衝突することは高橋さんもDeNAも望んでいないので冷静になってほしいですね」(スポーツ紙記者)

 一部のファンの暴走で不要な軋轢を生みださないためにも、球団や球場関係者には、しっかりした再発防止策を望みたい。

(今川秀悟)

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