
こんな声まであった。
「学生時代のアルバイト先はショッピングモール内の飲食店。休憩場所がないので、出勤前に施設のトイレでおにぎりを食べていました」(30代男性)
トイレが快適な場に
トイレに関する調査や施設のトイレ監修などを担うUN&Co.の代表で、現役東大生でもある原田怜歩さんは言う。
「商業施設やオフィスビルではトイレに空間的価値を持たせるようになっています。単なる排泄の場ではなく、快適で落ち着く場としてトイレ空間を提供しているのです」
実際、トイレの使用時間は延びている。原田さんらによる男女各100人規模の調査では、屋内商業施設での小用時のトイレ使用時間は2018年から24年で男性は6.7秒、女性は25.8秒増加した。サンプル数が多くないため誤差を含むほか、小便器を使うことが多い男性のデータは個室の状況をあまり反映しないが、個室利用時間は長時間化する傾向があるという。
「施設管理者に聞くと個室占有時間は平均で5分程度にまで延びていると話す方も多くいます。快適化・多機能化してゆっくりしやすくなったほか、トイレ内でのスマホの使い方にも変化があるようです」(原田さん)
個室の空き状況可視化
ネットワークプロバイダの「NordVPN」が22年から23年にかけて行った調査によると、トイレでスマホを利用する人の割合は日本では68%。この「トイレスマホ」事情が、以前とは少しずつ変わってきている。UN&Co.が昨年、主に10代から40代の500人を対象に行った調査では、トイレ内で利用されるスマホアプリは10~20代で首位がInstagram、2位がTikTok、30~40代ではLINEがトップだった。そして、全年代を通した利用時間ではYouTubeが最も長かったという。
「トイレでYouTubeを視聴することがある人の割合は18年の4倍です。ショート動画の隆盛で、隙間時間に動画を見る人が増えた。1本は短くても次々に動画が表示されるので、滞在が延びているのだと思います」(同)
原田さんは、混雑解消には個室数の最適化に加え、施設全体の利用状況の均一化と回転率の向上が欠かせないと話す。(編集部・川口穣)

※AERA 2025年4月14日号より抜粋