
「おままごととはちょっと違って相手の言葉をキャッチしながら、即興で会話をする感じです。いま思い返せば、お芝居のエチュード(即興劇)に近いかもしれません」
セリフは文字で憶えない 感情を自分の中に入れる
学校では「けっこうちゃんとしていた子」だった。校則を守り、学級委員などのリーダー役にも進んで立候補した。いっぽうで「売られたケンカは買う」一面も。小学生時代には男子と一対一で取っ組み合いをしたこともある。
「私は二面性のあるキャラクターをいただくことが多いんですが、自分もそういうところがある。すごく元気だけど落ち着いている、とか、グループ内にムードメーカーがいたら自分は静かなほうにまわるとか。その場その場で自分を変えている気がします」(高石)
大勢のグループにいるよりも一人一人と深く関わり付き合うタイプだ。そんな友人の一人の影響で通いはじめたヒップホップのダンススクールが、芸能界へ続く道を開くことになる。
小学6年の時、スクールの壁に貼られたキッズコンテストのオーディションのポスターをみて応募を決意。モデル部門で入賞し、ウォーキングやダンス、歌のレッスンが始まる。高校からは東京を拠点に育成生としての生活が始まった。朝から晩までレッスンに明け暮れる日々。次第に舞台で演技をする機会も生まれた。最初は「楽しい」しか感じなかった。しかし回を重ねるごとに「出来ていない」自分に気づいていく。言葉が硬く、すべてのセリフが「文字」でしか出てこない。話し声も自分が思っている音と全然違う。それでも子どものころからの「癖」をなぞるように、演じることの楽しさにはまっていった。

「例えばセリフを覚えるのに、文字で憶えるのは絶対に難しいんです。『お昼におにぎりが食べたいな』というセリフがあったら、まず『お腹すいた』という感情を自分の中に入れる。お腹すいた、なにか食べたいな、おにぎりがいいかも、という感情の流れから『おにぎり食べたいな』に繋げていくと憶えやすい、とか」(文中敬称略)
(文・中村千晶)
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