延江浩著『小林麻美 第二幕』(朝日新聞出版)

 知り合ったきっかけは2020年3月刊行の延江さんの著書『小林麻美 第二幕』(朝日新聞出版)を一緒につくったことだった。

 松任谷由実さんこと、ユーミンが嫁いだ「松任谷家」と昭和の怪物、頭山満の関係を描いた『愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家』などの著作を持つ作家でもあった。

 延江さんは、芸能事務所大手「田辺エージェンシー」の田邊昭知社長と結婚後に芸能界から引退、長い間、表舞台から消えた小林麻美さんの四半世紀ぶりの復活劇に迫った寄稿を週刊誌「AERA」(2018年8月27日号、9月3日号)で発表。もっと詳しく知りたいと、「本にしませんか」とお願いした。

 小林麻美さんは私が学生の頃、女性が憧れる「時代のミューズ」。ユーミン、ジェーン・バーキンさんらとの華やかな交友録をファッション誌でむさぼり読んだものだった。

 追加取材した延江さんは、独特の美しい文体で小林麻美さんとその時代、東京の風景、空気、音楽までも描き切った。

 そして小林麻美さんと延江さんの交流は出版後も続いた。

 延江さんの訃報について小林麻美さんに話を聞くと、「本当にさびしい」とため息をついた。

「引退後、ユーミンとはずっと会っていなかったのですが、延江さんと一緒に本を作ったことがきっかけで、昔のように食事やコンサートに行ったりするようになりました。本当に感謝しています」

 8日午後に延江さんと会う約束をしていたという。

「エリック・クラプトンのコンサートチケットを取ってくれたので受け取りに行く予定でした。まさかこんな急にお別れの日がくるとは……」

 好奇心旺盛で人たらし、ロマンチストだった延江さん。少年のような笑顔はいつまでも忘れません。

 葬儀は12日午前11時から東京都新宿区須賀町14の1、四谷たちばな会館。喪主は妻裕子(ゆうこ)さんと長男仁(じん)さん。

(朝日新聞編集委員・森下香枝)

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