TBSの番組改編期恒例特番「オールスター感謝祭'16秋」の翌日に放送された「オール芸人お笑い謝肉祭'16秋」。感謝祭の連動番組で、〈感謝祭に出られない&出ても活躍できない芸人たちにクイズとゲームでチャンスを与える新たな祭典!!〉ということらしい。
最高賞金1千万円を目指して4チームが1泊2日の熱海の旅でカラダを張ったクイズ対決に臨み、総合MVPには次回感謝祭の出演権が与えられるという。
実行委員長はとんねるずの石橋貴明。サブがタカアンドトシと笹川友里アナ。それぞれのチームリーダーは、アンガールズ田中、バイきんぐ小峠、平成ノブシコブシ吉村、オードリー春日。ほかに番組いわく“総勢40人のクズ芸人”たち。出演者をクズ芸人呼ばわりしている時点で、番組の姿勢がわかりそうなもの。そこで気づくべきだった。3時間半。これほど時間を無駄にしたと後悔させる番組も珍しい。
ゲームの一部を紹介すると、たとえば〈大声厳禁サイレント風呂〉。風呂の中で声を出したら負けというルールで、風呂の椅子が壊れたり、シャンプーが臭かったり、三助さんに股間が痛くなる薬を塗られたり、さまざまなトラップを仕掛けられながらも耐えるというもの。股間に薬を塗られた人が痛がるのをケラケラと笑って見ている絵面にドン引き。
さらに、台車に乗った挑戦者のお尻の的をめがけて放水する〈WOOシュレット!早押し〉や、女性の谷間をチラ見する回数が多い人が負ける〈谷間チラ見ダービー〉、〈パラシュート鼻フックイントロ〉〈ぬるぬる滑り台〉と説明するもおぞましいものばかり。
世の中の番組がすべて意味のあるもの、価値のあるものでなければいけないなどという気はさらさらないが、これはひどい。このご時世に、裸と股間と尻を出すことで、攻めた番組を作ったと思っているのなら、おバカもいいところ。
そもそも芸人を集めて過酷な目に合わせるといえば、過去には「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」(日本テレビ)があり、焼き直すにしてももっとうまくやってほしいものだ。くだらない、ばかばかしい番組、大いに結構だが、自分たちだけで楽しんでどうするか。いまどき、予算はかかっていそうだが、こんな番組にお金をかけるなど、もったいないの極み。それとも無駄金を使えるほどTBSは儲かっているのか。
こんな番組を「感謝祭」とセットで恒例にされてはたまらない。TBSに抗議のダラクシー賞を贈る。
●ひやま・たまみ 今年6月にこの世を去られた音楽評論家・宇野功芳先生の最後の本(『宇野功芳の軌跡』音楽の友社)を編集しました。「自分の好き嫌いに関係なく、良いものは良い、悪いものは悪い、そのことをはっきり指摘し得るのが、批評家の力量なのだ」という先生の言葉を胸に刻み、精進します。