大部屋から個室や少人数の部屋に移動した際に生じる「差額ベッド代金」の支払いを拒むケースも増えている。入院患者本人の希望で移動した際も、差額料金を求められると、「病人に対するこの仕打ちはなんだ。お前たちには福祉の心がないのか」と反発する人がいるという。濱川さんは言う。

「患者やその家族は物価高で手取りも年金も増えない中、医療費の負担が増えていることによるストレスがある一方で、医療はますます複雑化し、医療従事者の人手不足も深刻化しています。医師と患者双方の負担が増すことで、今後さらにペイハラが増えることを危惧しています」

濱川さんは「言ったもの勝ち」の面もあると言う。多忙な医療従事者は無理難題を突き付けられても、それに抵抗して時間や労力を費やすのはもったいないと考え、そのまま受け入れてしまうのだ。

「それに味を占めた人たちが他の医療機関でも同じような難題を吹っ掛ける、モンスターペイシェントになっていきます」

患者本人や患者の家族に対し、濱川さんはこうアドバイスする。

「超高齢化社会の到来で地域医療や福祉との付き合いはこれからますます長くなります。自分の老後のためにも譲れるところは譲り、不満を蓄積させないよう芽の小さなうちに担当者と直接対話し、解決しておくことが大切です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2025年4月7日号より抜粋、一部加筆

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