
こう話すのは医療機関向けコンサル「ウィ・キャン」(東京都港区)の濱川博招社長だ。同社が関東地方を中心とする七つの医師会に所属している1618の医療機関のグーグルマップの口コミへの対応状況を調べたところ、批判的な口コミに対してコメント欄で「謝罪」や「説明」、「改善に向けた取り組み」を発信するなど何らかの対応をした医療機関は1割弱。対応をした医療機関(3.5以上の評価が56%)のほうが、対応していない医療機関(3.5以上の評価が36%)よりも高評価の比率が高いことも分かった。この結果を踏まえ、濱川さんは病院側に丁寧な対応を促す。
「病院側も批判的なコメントには一つ一つ丁寧に回答し、ネット上の不特定多数の人に見てもらう取り組みは患者離れを防ぐ効果的な対応だと考えています。病院として外部の声に真剣に向き合う姿勢を示すことは内部の規律強化にもつながるはずです」
ペイハラを防ぐには、患者と医療従事者の関係をフラットにする必要がある、と濱川さんは訴える。
「かつては医師が患者を圧倒していましたが、インターネットの普及とともに20年ほど前から『患者がものを言う時代』に変化し、いまの力関係は患者サイドに振れてきたと感じています。私たちが目指すのは振り子が真ん中に落ち着く形にもっていくことです」
病院側が「これ以上、ハラスメント行為を続けると警察を呼びますよ」とたしなめると、患者が「お前はお客さまを犯罪者にするのか」と脅すケースもあったという。宿泊施設や飲食店を利用するのと同じ感覚で、病院でも「サービス」を享受するのが当たり前という意識の強い人が増えているのに加え、患者と医療機関双方の心理的・経済的負担が増していることが軋轢の背景にあるのではないか。そう指摘する濱川さんが患者側の負担増の一例として挙げるのが、「選定療養費」だ。
一定規模以上の病院にかかりつけ医などの紹介状を持たずに外来受診した患者に、診療費のほかに追加料金の支払いを義務付ける国の制度。22年10月以降は対象病院の拡大とともに、支払い額も7000円以上(初診時、税別)に引き上げられた。今は税込みで8800円を徴収する病院が多いという。