
元タレントの中居正広氏がフジテレビアナウンサーだった女性との間で引き起こしたトラブルについて、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)が設置した第三者委員会は3月31日、調査報告書を公表した。中居氏の行為について「性暴力による人権侵害」と断じ、経営陣の対応についても「経営判断の体をなしていない」「性暴力への理解を欠き、被害者救済の視点が乏しかった」と批判した。今回の報告書の読み解きを、危機管理広報を専門とするエイレックスの江良俊郎代表に聞いた。
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1月23日に第三者委員会が設置されてから2カ月余りで出された今回の報告書は、本記だけで267ページ、資料や要約版も含めると400ページ近い膨大な量でした。短時間で十分な調査をし、意味のある報告書にまとめ上げたと感じています。竹内朗弁護士を筆頭とするメンバー構成、日弁連の第三者委員会ガイドラインに基づいた調査を行うということで、設置が発表された当初からきちんとした報告書が出るだろうとは思っていましたが、予想を上回る踏み込んだものでした。フジテレビにとっては非常に厳しい内容です。第三者委員会と言っても「企業が選んだ弁護士によるお手盛りの調査」と見る向きがあったかもしれませんが、そうした懸念を一掃するものです。社会的に第三者委員会の本来の役割と機能を知らしめたという意味でも、意義のある報告書でした。
まず注目すべきは、事案前後に何があったのか具体的な内容がかなり詳細に明らかになったこと、本件を女性アナウンサーが中居氏から「性暴力による重大な人権侵害の被害を受け」たと認定したこと、それが「業務の延長線上」で起きたことと明記したことです。
中居氏は飲食店を探していなかった
事件当日、中居氏は女性に対してほかにメンバーを誘ったり、飲食店を探したりしていると伝えていながら、実際にはそれらを一切していなかったことが記されています。女性アナウンサーが中居氏の所有するマンションに行き、食事をしたことについても、「中居氏と女性Aの間には圧倒的な権力格差のある関係性が存在する。(中略)精神的に逃げ道を塞がれたといえる」「女性Aは、中居氏の誘いを受けて、最終的に同氏所有のマンションで2人で食事することに同意したが、この同意は、業務上の関係において2人で食事するという限度での同意であって、それ以上のものではない。/加えて、この同意が真意に基づくものであったとはいえない」としています。当日の出来事はプライバシー保護の観点から詳細に明かされないのはやむを得ない部分がありますが、今回はショートメッセージのやり取りなども用いて解き明かし、中居氏の行為を事実認定、厳しく糾弾したことは重要なポイントでした。
同時に、フジテレビの対応が適切でなかったことも強く指摘されています。報告書では本件を「有力取引先による社員に対する人権侵害の強い疑いのある事案であり、同社における人権に関する重大な経営リスクとして認識すべき事案」だったとしています。しかし、港浩一社長(当時)ら幹部は「プライベートなトラブル」として事件を収めようとしています。「(港社長ら)3名のみの偏った視点で検討され、多角的な視点からの検討や議論は行われなかった」「人権問題ととらえることができず、(中略)思考停止に陥り、浅い思慮により対応方針を決定した」という指摘の通りです。全体を通して、フジテレビが組織として意図的に事実を隠蔽した、ということではないでしょう。しかし、プライベートな男女間のトラブルとしてとして処理する方向に傾き、誰もそれを正すことができなかった。人権意識の希薄さ、組織としてのガバナンス不全は厳しく批判されてしかるべきです。