リモートワークの浸透や世代間ギャップなどを背景に上司と部下の距離が広がっていると感じている人は少なくない(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 いつの時代でも難しい上司の部下の関係。その距離感は昭和、平成、令和と時代が流れるにつれ、離れているという。調査結果からも、忖度し合う上司と部下の実態が浮かび上がった。AERA 2025年4月7日号より。【前編はこちら】上司が部下の信頼に応えない「片想い」で離職も 理想はWBC栗山英樹と村上宗隆の関係

【図を見る】「信頼のらせん関係」ってなに?

*  *  *

 一筋縄ではいかない、上司と部下の関係。興味深い調査結果がある。

 就職・転職やキャリア全般に関する調査を行うJob総研が昨年実施した「2024年 上司と部下の意識調査」。上司の91.4%が部下に「忖度(そんたく)」経験があり、部下も71.8%が上司に忖度した経験があると回答したという。

 忖度し合う上司と部下。Job総研広報担当の高木理子さん(25)はこう話す。

「たとえば資料を作成するとき、部下の中で『見やすい資料』の理想があっても、上司の好みに合わせた体裁で提出する。あるいは部下が会議で発言することが苦手なタイプであっても、上司が積極的な発言を好むタイプであればがんばって手を挙げてみたり。そんな些細(ささいな)な忖度も職場では起きていると思います」

 政治のニュースでよく聞く「忖度」。負のイメージがあるが、この状況をどうとらえればいいか。調査に携わった高木さんは、社会人3年目。いまの上司(40代)とはいい信頼関係が築けていると感じている。

「『広報の素質があると思うから、頑張ってみなよ』。そんな声がけでスタートしたキャリア。上司からすれば、私へのわずかな信頼に賭けて声をかけてくれたと思うんです。この上司に信頼を返せるように頑張ろうと仕事をしていました。だから自然と、いい信頼関係が築けているのかも、と思います」

 そんな上司との間でさえ、互いに忖度を感じることもあると高木さんは言う。

「私はコロナ禍で入社したので、リモートワークで上司も部下も互いの実態が見えづらく、距離がある状況。その距離を埋めるために忖度し合い、探り探りのコミュニケーションになるのは必然の部分もあると思います。『あ、気を悪くさせたかな』と感じても、コロナ前なら出社して『昨日はすみませんでした』といった声がけで挽回する機会もあったけどそれもできない。嫌われないための円滑なコミュニケーションをせざるを得なくなっているのでは」

次のページ ボスマネジメントも