捕手で目立ったのが小堀弘晴(健大高崎)だ。旧チームでは箱山遥人(現トヨタ自動車)がいたため昨年春夏の甲子園でも出場機会はなかったが、その強肩強打は高校生のキャッチャーとしては間違いなくトップクラスである。2.00秒を切れば強肩と言われるイニング間のセカンド送球では度々1.8秒台をマークし、キャッチングとブロッキングも安定している。打撃も少し腕力に頼ったスイングが目立ったが、パンチ力も申し分ない。攻守ともに上手く力を抜いてプレーできるようになればさらに評価は上がるだろう。

 高校から直接プロというタイプではないが、光るプレーを見せたのがイーマン琉海(エナジックスポーツ・二塁手)と岡部飛雄馬(敦賀気比・遊撃手)の内野手2人だ。イーマンは2試合連続で4安打を放ち、10打数8安打と大暴れの活躍。抜群のスピードが持ち味だが、決して走り打ちすることなくしっかり振り切って強い打球を放つ。1回戦では2度失敗した盗塁も2回戦では2度成功させ、守備でも球際の強さを見せた。一方の岡部は2試合でノーヒットに終わったものの、ショートの守備では好プレーを連発。小柄でも肩の強さがあり、守備範囲も広い。1回戦の滋賀短大付戦では3盗塁もマークしており、脚力でも目立つ存在だ。ともに大学や社会人で力をつけていけば将来的にはプロ入りの可能性もありそうだ。

 全体的にはすぐにプロ入りを狙えるという選手は少なかったが、今後が楽しみな選手はたしかに存在していた。ここに挙げた以外にも、甲子園での経験を糧にしてさらなる成長を見せてくれる選手が出てくることを期待したい。

(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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