
もう一人外国人スタッフとして働くのはスペイン出身のシベラ・シャファイ・アレハンドロさんである。日本に魅力を感じ日本酒も飲んでいたが、まあ悪くない程度の認識であった。しかし、「雪の茅舎」を飲んだ時、お米からこんなお酒ができるのかと衝撃を受けた。
「お米と麹だけでこんなフルーティーなお酒になるのが魅力です。ワインと比較されることもありますが、全然違うものです」
アレハンドロさんも笑顔で話す。おすすめはとてもきれいなお酒という新澤醸造店の「NIIZAWA 純米大吟醸」である。
お酒への愛は世界共通
いまでや銀座の店頭には李白の五言古詩「月下獨酌四首 其二」が掲げられている。
天若不愛酒 酒星不在天
地若不愛酒 地應無酒泉
天地既愛酒 愛酒不愧天
已聞清比聖 復道濁如賢
賢聖既已飲 何必求神仙
三杯通大道 一斗合自然
但得酒中趣 勿為醒者傳
この漢詩には天や地が酒を愛しているなら、天に恥じることはない。賢人も聖人も酒を飲む。三盃飲めば正しい道に入り、一斗飲めば自然に溶け込む。ただ酒を飲んで楽しみたいので、酔わない人に教えてやる必要などないと書かれている。
「海外からのお客様、特に中国系の方はこの写真を撮っていきますよ」と李白の五言古詩を指しながら片岡さんは笑った。どの国も酒飲みのお酒への思いは同じようだ。
片岡さんによると海外の客の好みが変化してきているようだ。
「少し前までは純米大吟醸が人気でした。銘柄や精米歩合を見て購入していました。今は味わい重視でスタッフが味について聞かれるようになりました」
その傾向は日本人より顕著に出ているそうだ。
ただ、日本酒の価格は安すぎるとも話す。
「価格を上げて農家さんを含めた生産者にもしっかり還元できればいいですね。そういう意味でも日本酒が世界に広がっていくことはうれしいし、そのお手伝いができるのは光栄です」
そう片岡さんは力強く話した。
(ライター・鮎川哲也)

※AERA 2025年3月31日号より抜粋