日本酒をはじめ、本格焼酎、日本ワインなど約1200種類がそろういまでや銀座のショーケース。その時々で季節の日本酒が並び、日々発見がある(撮影:写真映像部・和仁貢介)
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 海外で日本酒の人気が高まり、外国人観光客が日本酒を求めてやって来ている。なぜ日本酒は外国人を魅了するのか。AERA 2025年3月31日号より。

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「当店では7割が海外からのお客さまです」

 いまでや銀座店長の片岡昌弘さんは笑顔でそう話す。インバウンドの来店客が増え売り上げも右肩上がりだと続けた。

「コロナが収まり、外国人が日本に来て食事をする際に日本酒を飲まれるようになり、お店が当店を紹介してくれ、外国人観光客が増えました」と説明した。

 ここに外国人が訪れる理由は他にもある。それはスタッフが幅広い言語に対応し、さらにWine&Spirit Education Trust(WSET)など、日本酒の資格を取得しているからだ。

「スタッフ全員、英語は話せますし数カ国語話せる外国人スタッフもいます。お酒に関する資格もあるので、専門的なことまで相談できます」と片岡さんは自信をのぞかせる。

おすすめのお酒を持つマクシムさん(撮影:写真映像部・和仁貢介)

数カ国語で対応する

 外国人スタッフでグローバルマーケット創造のリーダーであるロシア出身のポルキン・マクシムさんはロシアの会社で働き日本に研修で来ていた時に角打ちで「風の森」を飲みショックを受けた。

「こんなに香り豊かで美味しいお酒があるのかと感激しました」

 マクシムさんは日本酒の魅力に取りつかれ日本酒の勉強をし、WSETの資格も取得、翌年にはWSETの日本酒を教える講師の資格も取得している。日本酒業界には10年以上従事している。マクシムさんのおすすめはアッサンブラージュという造り方をする白岩「IWA 5」である。

「私は日本酒にパッションを感じます。その思いも世界に広めたいですね」。そう話し微笑んだ。

おすすめのお酒を持つ陳さん(撮影:写真映像部・和仁貢介)

 同じくスタッフの陳友斌(チンユウヒン)さんは来日17年になる。ただ、日本酒の面白さを知ったのは5年前のことだ。

「温度管理などしっかり管理されたお酒を角打ちで飲んだのです。それまでとは日本酒が全く違うものに感じました」

 日本酒は世界一繊細なお酒で、温度が1度違うだけでも味が細かく変化するのが面白いと楽しそうに語り、辛口で自分が一番好きだと常山酒造「純米辛口 超 しぼりたて直汲生」をすすめてくれた。

「日本酒は歴史と文化が深く関わっているので、日本酒を知ることでそのまま日本の歴史と文化を知ることができました」と陳さんは目を輝かせた。

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