
前知事の名前のカードを全部差し替え
また、これもパワハラとは認定されなかったが、140万円の税金が不要に使われたと認定されたのが、「ココロンカード」問題だ。報告書によると、次のような内容だ。
兵庫県では小中学生を対象に、提示すれば博物館などの協力施設を無料で利用できる「ココロンカード」を作成している。小学校1年生のときに学校を通じ配布され、小・中9年間、同じカードを使う運用となっている。だが、斎藤氏は、すでに配布されたカードの県知事名が前の知事になっていることに気づき、すでに発行されているカードも含めて全学年分のカードを自分の名前の入ったカードに差し替えさせた。このため、必要性がなく、県民にとって特に支障もない理由で、140万円が支出された。
元検事の落合洋司弁護士は、この「ココロンカード」問題について、こう指摘する。
「優勝パレードの問題と比べれば金額は少ないが、140万円という税金を不要に支出したとして、背任、任務違背になりかねない」
また、百条委員会のメンバーだった丸尾牧県議は、こう話す。
「斎藤知事のパワハラ体質を受け、職員が過剰な忖度、配慮をした結果、140万円もの税金が無駄に支出されたことを第三者委員会が認めたことは大きい。自分の名前が入っていないというだけで税金を無駄に使ったことは、あるまじきことだ」
元県民局長に関する発言「極めて不適切」
第三者調査委員会が最も重要視したのは、元県民局長の公益通報に対する県の対応だ。内部告発した内容の多くについて真実である、あるいは真実と信じるに足りる相当な理由(真実相当性)があると認め、報告書で県の対応を違法、不当と断じた。
斎藤氏は昨年3月27日の記者会見で、元県民局長の告発文書について、「うそ八百」「公務員失格」と否定するとともに、次のように発言していた。
「本人(元県民局長)も認めていますが、(元県民局長が作成した告発文書は)事実無根の内容が多々含まれている内容の文章」
「ありもしないことを縷々並べた内容を作ったことを本人も認めている」
だが、報告書は、こう記す。
〈元県民局長は、事実無根の内容の文章を作ったと認めたことはない。調査も十分なされていない段階で、元県民局長が認めてもいないのに、事実でない内容の文章を作成したことを本人が認めている旨の発言をしたことは、極めて不適切である。発言は直後に撤回をすべきであった〉
〈(告発)文書には数多くの真実と真実相当性のある事項が含まれており、「うそ八百」として無視することのできないもの。むしろ、県政に対する重要な指摘をも含むものと認められた〉
〈(知事の)発言は元県民局長に精神的苦痛を与えるものであって、職員一般を委縮させ、勤務環境を悪化させるものであるから、パワハラに該当する〉