「空飛ぶクルマ」に試乗する斎藤知事

「聞いていない」と激怒し深夜にチャット

 今回の第三者調査委員会の報告書で認定された斎藤氏の「パワハラ」には次のようなものがある。

(パワハラ事例1)
 23年7月から、県立美術館がメンテナンスのため休館することになった。それは美術館のリーフレットなどに記され、斎藤氏のもとにも届いていた。だが、新聞の電子版の記事でそれを知った斎藤氏は激怒し、深夜1時前に担当職員らにチャットを送って、「長期休暇するなんて一言も聞いていない」「こんなことでは県立美術館への予算措置はできません」などと事情を聴くこともなく怒りをぶつけた。

(パワハラ事例2)
 大阪府が関西万博の目玉としたいと力を込めていた「空飛ぶクルマ」について、兵庫県は産業労働部が中心となり、「空飛ぶクルマ」のビジネス展開を目指す事業者に補助金を交付する政策を検討。23年1月に民間事業者と締結式が行われることになったが、それを事前に新聞が報道した。斎藤氏は激怒し、「空クルは知事直轄」「勝手にやるな」などと担当職員を厳しく𠮟りつけた。だが、産業労働部は前年から何度も知事に説明しようとしていたのに、斎藤氏が多忙として応じていなかった。また、報道は県議会で議論されていたことが中心で、産業労働部が新しく伝えた内容ではなかった。

(パワハラ事例3)
 斎藤氏が知事就任から約1か月後、兵庫県の事業について新聞報道があったが、斎藤氏は自分が関与していないことが報道されて立腹し、担当部署の局長と課長を知事室に呼び、「県として意思決定していないことを先に出すのはよくない。許せない」と机をたたいて叱責。机をドンドンと叩く音は隣の秘書室にまで聞こえた。だが、この事業は前知事が進めていたことで、県として意思決定していないことではなかった。

 一方で、片山安孝副知事(当時)との協議中に付箋を投げつけた行為や、斎藤氏が「オレは知事だぞ」などとよく発言することについては、パワハラとまでは認定されなかった。ただ、報告書は「オレは知事だぞ」などの発言について、こう記している。

〈その趣旨の発言を受けたという職員は複数存する。職員にとって、自身が知事であることをことさらに強調する発言は、それ以上反論できなくなるし、意見も述べられなくなる。実際に適切を欠く場面が存在した可能性もあった〉

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