石破氏でさえ「金権体質」から抜け出せない
しかし、それでもなお、国民の中には、これまでの自民党政治に終止符が打たれ生まれ変われるのであれば、もう一度だけ自民党に政権を担当させてもよいと考えた層もかなりの規模でいるようだ。
「もう一度だけ自民党」と考える人たちが期待をかけたのが石破首相だ。
自民党政治の象徴だった安倍政治に徹頭徹尾反対し、干されても干されてもなお総理への道を諦めず、ついに大願成就。その首相に期待したのは、過去の自民党政治との完全な決別である。
「ケチで人付き合いが悪い」ことは、自民党内では「悪評」だが、国民から見れば、「クリーンで、一人でも信念を貫く」政治家という高い評価につながる。
そんな自民党政治家は石破氏以外見当たらない。
国民にとっての最後の「一縷の望み」が石破首相だったのだ。
その石破氏が、1人10万円相当の商品券を配った。しかも1度ではない。さらに、違法ではないから問題ないと居直った。
国民は「裏切られた」と感じた。当然のことだ。
自民党への最後の期待もこれで終わった。そう思った国民はかなり多いのではないか。
石破氏の今回の行動は二つのことを示した。
自民党の中で唯一信頼できると思われた「クリーン」な政治家が、実は、自民党の金権政治の悪習に染まり、しかも、批判されるまで自分で気づかなかったということは、自民党が金権政治を終わらせることは不可能だということを示した。
第二に、自民党内で最も庶民に近く、最も謙虚なはずの政治家が、「違法でないから問題ない」という倫理観を持っていることを示してしまった。
この考え方は、安倍晋三元首相の考え方と全く同じではないか。安倍氏の場合は、さらにこれがエスカレートし、違法でも捕まらなければよい、捕まえさせなければよいという倫理観となった。
自民党で最も倫理観において信頼できるはずの政治家、石破茂が全く信じるに足りなかったということは、自民党には信頼できる政治家はいないということになる。
そこから出てくる結論は、自民党に政治は任せられないということだ。
金権体質は誰から見ても「悪」である。石破氏でさえこの体質から抜け出せないということは、金権体質は自民党の「根源的DNA」だということをあらためて示した。「根源的DNA」は矯正不能だ。ということは、「悪」を根絶するには、自民党を消滅させるしかないという結論になる。