飲み食いしながら結束を確認

 歴代首相も会食でお土産を渡してきたという疑いも濃厚になっているが、昔から多くの自民党政治家と交流を持った私から見れば、これは全く驚きではない。

 自民党というのはそういう政党なのだ。お金が潤滑油。上に立つ者は下の者にお金を配るのが当たり前。下の者はパーティー券販売マシンとなって資金稼ぎに貢献することが当たり前。それができない者は爪弾き。それが自民党という組織の掟なのである。

 何をするにも、まずはお金。毎晩高級料亭あるいは高級レストラン・バーでの飲食が行われ、あらゆる話はそこでなされる。お金がなければ政策の話をすることもできない政党なのだ。

 もちろん、表では政務調査会の部会などで政策を話すことはするが、その裏では毎晩議員たちが飲み食いしながら結束を確認し、政策のみならず選挙の相互支援などの話をしている。

 お金がなければ何もできない自民党の命綱は企業や団体による巨額の献金だ。

 もちろん、何の見返りもなく献金する企業はない。その構造は、大きくみれば贈収賄だ。

 ただし、政策決定の一件一件は、個別の献金とリンクしているわけではなく、また、長年の実績を重ねることで、全て阿吽の呼吸で行われる体制ができているため、立件されることはまずない。税も予算も、財務省はじめ各省庁が全てお膳立てすることで、議員は手を汚すことなく、あたかも政策論で動いているかのような体裁が保たれる仕組みができている。

 このような構造は、自民党が野党になってもなくならなかった。

 一方、これと同じ仕組みをつくるためには、野党(その時は与党)の政権担当期間は短すぎた。

 結局、自民党は資金力で力を蓄え、「一時の風」で政権についた野党(同)の人気が落ち目になったところで必ず復活してきた。

 金の重要性を知っている自民党は与党でいることの重要性をよく理解している。組織として、金の力で一体性を保ち、また人間関係も金の力で維持している。

 一方、野党は資金力では自民党に太刀打ちできない。一部の例外を除き、少ない資金で政治活動をやってきた。立憲の江田憲司衆議院議員のように企業・団体献金を一切受けない政治家もいる。

 しかし、金のしがらみがない分、ひとたび問題が起きると、簡単にバラバラになるのが弱点だ。まとまりがないとか内輪揉めばかりと言われるが、それは金に縛られていないことの証しなのだ

 自民党のどうしようもない金権体質は、何回スキャンダルが起きても変わらなかった。国民は、繰り返し自民党に裏切られてきた。そして、ついに見放す時が来たと感じている。それが、昨年の衆議院選挙の結果だ。

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