上祐氏は「隠れキリシタン」のよう
――処分でお布施も受けられない状態です。資金面で追い込まれているように見えます。
アレフの資産は、5年ほど前までは10以上はある関係会社名目などで合計10億円以上ありました。まだ何億円もあるのだろうが、先細りになってきている。160人ほどの出家者の多くは他で仕事をしているが、毎月の余剰金はたかが知れていますし、今は教団全体で収支が把握できているのかすら疑問な状態です。
――アレフと一線を画す「ひかりの輪」のほうは上祐史浩代表を中心に「脱麻原」を掲げてまとまっているように映ります。
彼はオウムですよ。私も公安調査庁もそう見ています。上祐代表は、偽装で「脱麻原」を始めたが(後に)本物になったとしている。麻原の説法では、彼はゆくゆく独立した形で教えを存続させる立場だともしてもいる。弥勒菩薩・マイトレーヤとしてね。私は、彼がそれを忠実に実行しているとみます。
――上祐代表は麻原元教祖を公然と批判していますが。
組織を生き残らせるために、意に沿わないことをもやれるのが彼なのでしょう。踏み絵をしてでもカトリックを守った隠れキリシタンを思い出させます。社会が忘れるまで何年、何十年も待つでしょう。
――彼の周囲の人たちはどういう考えなのでしょうか。
上祐代表と同じでしょう。彼の考えを理解した上で付き従っている。いつの日か、「グルはやはり麻原尊師だ」と言ってくれるのをじっと待っている。これは、(「ひかりの輪」に)元いた人からも聞いたことです。
――アレフとは異なり、被害賠償を継続しています。
たかが1カ月数十万円ずつですが、大したものです。私がアレフに助言する弁護士ならば(未払いになっている)10億円超の「現世の責任」を果たして「これ以上は宗教弾圧だ」として、教えの正当化を図るでしょう。
また意外に上祐代表は腐敗しませんね。女性問題だとか、幹部だけぜいたくをするとか、まあ聞こえてこない。ストイックに「修行」として大罪を犯した死刑囚と同様に意外と「まじめ」だった。そのグルは「麻原尊師」であり、その指示で上祐代表は分派したのです。彼を「名誉ある隠れキリシタンの祖」といった地位に就けたくない。そこは忘れてはならない。
(朝日新聞社出版・夏原一郎)

