「分派」ができる可能性も

――組織は嫌になったが、自分が長く信じてきたことからは抜けられないということでしょうか?

 仏教が好き、輪廻転生を信じるというのはまったく問題がない。麻原彰晃が最終解脱者グルなのだ、絶対者の指示には「深いお考えがあった」ということを否定できるのかが神髄です。輪廻転生や現世は幻かもという感覚、四苦八苦までも否定しなければいけないと誤解している人がいるが、それは違う。

 ここ数年の脱会者は、これまでとはさらに異なります。「麻原尊師」を信じたまま、ただグルが現存しない、新たなグルとうわさされる人を尊敬できない、麻原信仰自体は何も変わっていない状態で出てくるのです。親元に戻っても「戻ってきてやった」という感覚しかないのでしょう。分派ができようものなら、すぐに小集団を作るでしょう。

 分派については、過去、施設内で竹刀でたたかれ続けるなどして2人が死んだ分派「ケロヨンクラブ」などがありました。これと同様に、「私の胸の中に尊師がいる」などと説く話の上手な“神がかりのグル”が出てくれば成立します。まして、麻原の遺骨が民間に出回れば、「訳あって取得した」となり、お釈迦様の仏舎利を持つのと同様の正統性を持ってしまいます。

――どういう立場の人が脱会しているのでしょうか。

 一般の出家者だけでなく、合同会議(※アレフの公式な意思決定機関)のメンバーである「師」クラスの幹部が抜けていることが注目されます。会議には師が二十数人いたはずが、ここ数年で十数人になっていると聞きます。最近は合同会議もろくに開かれていないようです。合同会議の幹部であっても何かあると修行部屋に入れられてしまう。合同会議とは別の指揮命令系統があるということでしょう。

――それが「麻原家」であると。

 それ以外には考えられないですね。男児2人は「生まれながらの最終解脱者」とされ、アレフは、国会で公安調査庁が答弁したように次男を新たな教祖にしたがっている。その共に住んでいる(麻原の妻)には、アレフが絵画使用料を支払ってきた。そこが焦点です。妻は、自分の刑事裁判中は離婚すると言いながら離婚しないままでした。次男は一般出家者の前には姿も声も見せないようだから、次男に不満があって脱会するのは幹部ということになります。脱会幹部からは、(次男は)表立って出ることもしないのに、グル然としていることへの不満の声が聞こえてきます。

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今は「グル」が出てこない奇妙な状態