「麻原家」も観察処分の対象とすべき
――アレフの提出する団体報告では、麻原家の人たちは誰も構成員にはなっていません。
しかし家族の周囲には元信者と称する出家者が付き添い、身の回りの世話をしている。幼少期は「脱会者」名目の周囲の人たちがオウムの教義を教えていました。本当にオウムをやめたのなら麻原の妻や子どもらとは関係しません。宗教的に麻原をグルとし、その血脈を崇拝するからこそそばにいる。むしろそれが本体だと考えてきました。公安調査庁もそう見ているのでしょうが、もっと踏み込んで(アレフとの密接な関係が確認できた麻原家の人は)観察処分の対象とすべきだと思います。
――団体規制法に基づく再発防止処分(2023年~)によって、アレフは収益事業を禁じられ、資金源を絶たれた形になっています。これが組織に不安をもたらしているのではないでしょうか。
処分を受けて、アレフはどんどん裁判を仕掛けてくると思ったが、まともな対応が取れなかった。今は代理人弁護士を付けない裁判をいくつもしている。組織として役に立たない高齢者や精神的に不安定な人が何人も追い出されている。組織が弱ってきているのだと思う。
分裂前のアレフは債務を引き継いで、地下鉄サリン事件などの被害者や遺族に対する賠償金を、オウム真理教犯罪被害者支援機構(2008年~)に支払う約束をしたんです。あの約束をさせたのは故阿部三郎・破産管財人弁護士の大きな功績です。教団内には賠償金を早く払ってしまい、団体規制法の制約を受けないように努めたほうがいいという意見もある。しかし教団内で反対にあったとされている。そういう大きな方針をめぐって意見の対立が続いてきたのでしょう。
――団体規制法によって、宗教活動そのものも制約を受けています。アレフがより孤立化、潜在化する心配はないでしょうか。
それは教祖次第ですが、今は「グル」が出てこないという奇妙な状態です。麻原のように社会への恨みが強いグルが出てくれば、テロはあり得る。だがこの30年間、外への暴力はまったく起きなかった。日本という国は宗教の扱いが意外にうまい、歴史のある国だなと感心しました。1997年、破防法(破壊活動防止法)に基づく解散請求は認めないということで地下に潜らせなかった、そして脱会したならば温かく迎え入れたことが正解だったと思います。外部への攻撃をさせずに内部崩壊という悲劇にとどめられるようにしたい。つまりアレフの分裂があり得るが、責任を逃れるために偽装の解散宣言をして、役に立つ者のみの名を変えた団体となる可能性もある。それを作らせず、クモの子を散らすように皆、組織から離れさせたい。