
会場の地盤は「底なし沼」
また、地盤の脆弱さも報じてきた。
協会が2022年9月に開場予定地で実施したボーリング調査のデータを見ると、一部の場所では20メートル過ぎまで強度が乏しいゆるゆるの地盤が続いていた。一般的なマンション建設の場合、鉄骨を地中に打ち込み「支持層」と呼ばれる固い地層に届くまで10~20メートルとされているが、万博会場には地中、20メートルまで深く打ち込んでも、支持層がない部分があるのだ。
今回の護岸の浸食を受けて改めてBさんに聞くと、こんな話をする。
「会場の地盤は、地中のある地点までくるとズルズルと沈み込むような感じ。現場ではみんな、『底なし沼だな』と言ってました。盛り土をしたところでも、強度があまりない地盤なので浸食したのではないかと思います。私が去年、現場にいた時、『盛り土では無理でコンクリートなどを打たないとダメではないか』という声を聞いたこともあります」
護岸だけでなくリングを支える地盤自体に影響はないのか。協会はホームページでこう説明している。
「約2mの盛土の下に約1.5mの地盤改良層があり、基礎構造は杭基礎となっています。杭は地中約60m付近の固い地盤で支持しており、杭の上部に基礎を設け、基礎と基礎を連結する基礎梁でリングを支える構造となっています。浸食の影響を受けず大屋根リング自体の構造は安定しています」
60メートルも下の地盤まで杭を打って支えているため、安全性に問題はないという。
今後は浸食した護岸を砕石で覆うなどの対策を検討しているというが、護岸を補強する工事費用はどうなるのか。
万博の建設費は、当初1250億円だったのが、最大2350億円まで膨れ上がった。そのうち災害や物価上昇などに備える「予備費」が130億円あったが、すでにメタンガスの爆発事故対策費用や予定されたパビリオンが減ったことによる土地の転用費用などに半分ほど支出されることが決まっている。それだけに、護岸工事でさらに予備費が使われ、開幕前から予備費が乏しくなってしまうのではないかという懸念がある。
これについて協会副会長でもある大阪府の吉村洋文知事が報道陣の質問に答えて、
「予備費を支出しなくても、予算の執行の差で対応できると思う。(工事は)大掛かりなものではないと聞いている」
と説明した。
さまざまな問題が噴出しながらも、協会は「問題はない」「安全だ」と繰り返し、万博はもう開幕直前だ。失態を万国に博覧されることにならなければいいのだが。
(AERA dot.編集部・今西憲之)

