松岡かすみ『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』(朝日新聞出版)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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「いつかは子どもを」と考えつつも、日々の生活や仕事に追われているうちに、“出産適齢期”の上限とされる35歳を過ぎてしまう。万人に共通するベストな「産み時」なんてないけれど、タイムリミットも存在する。そんな悩みを解決すべく生まれたのが、「卵子凍結」という医療技術である。

 週刊朝日の元記者、松岡かすみさんの著書『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』の中では、年齢も育ちもキャリアも違う8人の女性が登場している。第1回は、佐藤陽子さん(仮名・39歳・AI関係)の声を再構成して紹介する。

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 佐藤さんは3年前、36歳の時に2回の採卵手術を行い、現在クリニックに計23個の卵子を凍結している。そのことをSNSで積極的に発信していて興味を持った。

 結婚はしていない。自分がこの先、結婚して、子どもを産みたいのかどうかは分からない。だが卵子凍結で、その時点での卵子を保存しておけるなら、少なくとも焦らずに、もっと自由に、本来の自分らしく、恋愛を楽しめるのではないかと考えた。同時に、自分がこの先、結婚や子どもを望むのかどうかという大きな問いについて考える、時間的な猶予も持てそうだと思った。

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純粋に恋愛を楽しみたいから卵子凍結をした