
関東の人間にはあまり馴染みがないかもしれないが、1967年に阪急電鉄の子会社として設立された私鉄だ。23年度の売上高は約58億円の準大手。江坂と千里中央を結び、大阪の大動脈・大阪メトロ御堂筋線に乗り入れていた。その北急が昨年3月、終点の千里中央駅から北に約2.5キロ延伸し、箕面市(みのおし)まで延びた。新田さんはこう評する。
「箕面市は大阪都心部の北に位置し、箕面大滝など観光地も多く、文教地区としても知られています。しかし、唯一の欠点が交通の便が悪かったこと。延伸した距離はわずかですが、インパクトは大きい」
さらに、北急と大阪メトロは両社を乗り継いだ際に20円の割引をしていたが、今年1月からは割引額をさらに40円に引き上げた。
「例えば、北急の終点・箕面萱野(みのおかやの)から御堂筋線の新大阪まで乗った際、430円から390円となりました。この物価高の時代に割引額を引き上げたのは、かなりのプラスポイントです」
スポーツとエンタメも
最後に挙げるのは「阪神なんば線」だ。
「スポーツとエンターテインメントに強い路線です」
と新田さん。

同線は、阪神電鉄が運行する路線で尼崎~大阪難波間で2009年に開業した。わずか約10キロながら、神戸と奈良が直通列車でつながったことで、「革命的」といえる人の流れの変化をもたらした。
そして、今年3月、途中の「大物(だいもつ)」駅近くにプロ野球・阪神タイガースの2軍本拠地「ゼロカーボンベースボールパーク」が開業した。同線には「ドーム前」駅があり、近くにはオリックス・バファローズの本拠地、京セラドーム大阪がある。沿線に、プロ野球の本拠地球場を複数抱えている大手鉄道会社は阪神のみ。
「例えば、昼間は阪神の2軍戦、夜はオリックス・バファローズの試合の『はしご』もできるということです」(新田さん)
さらに、途中の西九条駅でJRゆめ咲線に乗り換えれば、4月に開幕する大阪・関西万博の会場までのシャトルバスが発着する桜島駅に行くことができる。
「阪神なんば線は大阪・関西万博への接続線の役割も担うことで、エンタメにも強い路線になりました」(同)
鉄道は街をつくり、人をつなぎ、文化を生んできた。鉄道各社は個性や強みを生かし、時代に合わせた挑戦を続けるだろう。次の時代の「最強の路線」は、どこか。(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年3月24日号より抜粋

