写真はイメージ(GettyImages)

 そんな祖母は、実は乳房外パジェット病も患っていたようで、外陰部にできた病変部を切除する手術を年始に受けました。といっても、事前に聞かされていたのは、手術にあたり保証人となった私の母のみ。「心配をかけまい」と祖母は手術をすることを内緒にし、そっと退院して、さも入院などしていないようなフリをしたかったようなのですが、祖母の計画は見事に失敗に終わりました。この入院がことの発端となり、警察を巻き込む事態が起きてしまったからです。

 骨髄線維症を患っている祖母は、血小板がとても少なく、入院当日も手術後も輸血が必要な状態でした。手術自体は1時間半ほどで終わったものの、出血が思っていたよりも多かったため、その日の夜に再手術となりました。しかし、祖母にとってはそんなことは想定外の出来事。当初祖母が希望していた2泊3日の入院期間では退院できそうもないことを悟った祖母は、麻酔が切れたあと拘束されるほどの混乱状態に陥ったそうです。

祖父が警察に保護される事態に

 退院が延期になってしまったことを、入院中の祖母と同居していた祖父に知らせに、母は祖父母宅に向かいました。すると、祖父は「わしは(入院については)何も聞いていないんやけどな……」とつぶやいたというのです。母は不思議に思いつつも、「いつも通りとぼけているんやろう」と解釈し、祖母が入院する旨を書いて残しておいたメモの続きに、「退院延期」と書き記し、数日分の食材とお金を残して帰宅しました。

 すると翌日、警察に保護されるという出来事があったのです。自宅までの帰り方がわからなくなってしまっているところを「道に迷っているようだ」という通報により、警官に保護され、自宅までパトカーで帰ってきたというのです。

 実は、母が訪れるその数日前にも、パトカーで自宅まで帰宅するという騒ぎがあったことが、後ほどわかりました。普段着のまま食べるものを探しに外に出たところ、道に迷ってしまい、近くの神社まで行ってしまったところを警官に保護されていたのです。

 入院することを聞かされていなかった祖父(認知症ゆえ、祖母は祖父に伝える事ができなかったのでしょう)は、いつも食事を用意していた祖母がいないことを悟り、室内着のまま食べるものを探しに外に出てしまい、その結果、二度とも自宅に帰る道がわからなくなってしまったのでした。

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祖母は認知症を誰にも打ち明けず