笑顔を見せる藤井聡太王将=2025年3月9日、埼玉県深谷市
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年3月24日号より。

【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん

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 3月8・9日、埼玉県深谷市において、ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第5局・藤井聡太王将(22)-永瀬拓矢九段(32)戦がおこなわれた。結果は120手で藤井が勝利。4勝1敗で防衛・4連覇を達成した。

「第1局から難しい局面も多い将棋も続いたかなというふうに感じているので。指していて充実感というのもありましたし。その中で、結果を残せたこともうれしく思っています」

 藤井のタイトル通算獲得数はこれで28期。谷川浩司十七世名人を抜いて、歴代ランキングで単独5位となった。

「谷川十七世名人の記録を超えることができたというのはやはり、光栄なことだと感じています」

 本局はまず、後手番・藤井の2手目が話題となった。藤井はデビュー以来8年半近くにわたって、飛車先の歩を突く△8四歩だけを指してきた。本局では初めて、角筋を開く△3四歩を指した。

「このシリーズが始まったときから、後手番のときは2手目に△3四歩と突くことも含めて作戦、考えてみようかなというふうには思っていたんですけれど。それを本局で試してみたという形でした」

 藤井は練習対局の場では、永瀬を相手に△3四歩を指していて、意表を突く意図はなかった。しかし永瀬は意表を突かれたようだ。

「ちょっと準備不足だったなと思います」(永瀬)

 藤井は慣れない形ながらも、うまく指し回して少しずつポイントを稼いでいく。最後は永瀬玉を一気に寄せ切り、新境地を切り開いた一局をきれいに締めた。

 藤井は七冠を堅持して、2024年度の対局をすべて終えた。王将戦恒例の記念撮影では、地元名産の深谷ネギを収穫する写真を撮影された。藤井は野菜の中では、ネギが一番好きなのだそうだ。(ライター・松本博文)

AERA 2025年3月24日号

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