
ある女子校に18年間通っていた女性は「女子校の方が図太くなれる、ひとりで生きていける人が多い」と話す。“男らしさ、女らしさ”のような性別による役割意識の醸成は共学と別学で違いがあるようだ。AERA 2025年3月24日号より。
【共学 別学で比較】“女は家庭”に賛成?反対?の割合はこちら
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「大学に入って体育の講義で重たい物を持つとき、共学出身の女子たちが一切動かないのを見て驚きました。女子校では、大きなマットなどはみんなで協力して運ぶのが当たり前でした。でも、共学出身の子たちは、別に斜に構えているわけではなく、『動くような役割ではない』と思ったのでしょう」
そう語るのは、神奈川県にある私立の女子校に中学・高校の6年間通った会社員の女性(28)だ。
幼稚園から大学まで、都内にある女子校に18年間通っていた会社員の女性(33)も、次のように語る。
「女子校で育つほうが図太くなれるというか、『男を立てる』必要がないので、前に前にという気持ちは強くなります。ひとりで生きていける女子が多いと思います」
さらに、学級委員長もクラブ活動の部長も、当たり前にみんな女性。性別によるバイアスが働かず、誰もが自然にリーダーになるような感覚が養われるという。
また、相対する異性がいない環境のため、「私たちは男子/女子である」という意識が強くならないのも特徴だ。冒頭の女性は言う。
「私はXジェンダーでパンセクシュアル(あらゆる性別の人が恋愛対象)です。部活の後輩と付き合っていたこともありましたが、クラスメートたちは『そうなんだ』と受け入れてくれていました。性別にとらわれることなく、私のXジェンダーも否定されずに、すんなりと受け入れてくれたのは別学の良さだと思います」
「女は家庭」に賛成も
なるほど、彼女たちの話を聞いていると女子校には、フラットな感性が育つ面がありそうだが、一方で、別学のジェンダー・バイアスに関しては、残念なデータも出ている。
「共学と別学はどちらにも良い点がありますが、私の研究結果では、それぞれのジェンダー観に大きな違いがあることがわかりました」
そう語るのは、東京都立農業高校で公民の教諭を務める塙枝里子さん。
「『夫は外で働き、妻は家庭を守るべきか』という質問に対して、賛成か反対かを問う調査を行ったところ、男子校と女子校は共学校よりも『賛成』『どちらかといえば賛成』と答える割合が高かったのです。これは家庭の影響が非常に大きい側面はありますが、結果から別学ではジェンダー・バイアスがより強く形成されやすい傾向が示されました」
(ライター/編集者・千駄木雄大)
※AERA 2025年3月24日号より抜粋

