
「とてもいい霊能者に出会った」
寺本さんの友人は、こう話す。
「寺本さんは50歳過ぎたくらいから、浜田容疑者のところに出入りするようになった。寺本さんには技術者特有の頑固さやこだわりがあり、人間関係や人づきあいがうまくなかった。それが、ある日を境にすごく明るくなった感じがしました。聞けば、『とてもいい霊能者に出会った』『素晴らしい先生で、教えを乞うている』と言うんですね。変な宗教に引っ掛かっているのかと心配になったが、大丈夫だと言っていた。たしか『創造主の先生についていく』と言って、河内長野市に家を買ったと聞かされました」
浜田容疑者が逮捕時に住んでいた河内長野市内の一軒家は、2010年に寺本さんが購入した物件。不動産登記を見ると、17年6月に、「贈与」という形で、寺本さんから浜田容疑者の親族名義に所有権が移転していた。
友人はこうも言う。
「寺本さんは退職後、『会社を興して、すごいスピーカーを開発した。これで、世界の人たちに、最高の癒しを提供できる』などと言っていました。『スピーカーのデモをやるから来てくれ』と言われたのは、10年ほど前です。黒いスピーカーが並び、流している音楽は、いかにも宗教的な感じがしました。何か怪しげだったので、周囲にいた人たちも軽く挨拶して早々に退散していました。とても1000万円もするスピーカーじゃない。宗教かなんかにはまってしまったんだと思いました」
寺本さんの会社の登記をみると、このスピーカーを開発した翌年の16年に社長が寺本さんから寺崎容疑者に変更されている。
友人が寺本さんと最後に話したのは6年ほど前、電話だったという。
「信じていた先生にお金をとられてしまい、財産が残り少ないと言うのです。やっぱりな、と思って、関係を切るようにと進言しました。寺本さんは『そうですね』というばかりで、すぐに電話は切れてしまった。その電話がSOSだったのかな」
それ以降、連絡はなく、今回の事件報道で寺本さんの死を知ったという。
家も会社も捧げた寺本さんは、最後まで浜田容疑者の“洗脳”が解けなかったのだろうか。大阪府警は、浜田容疑者が2人の財産目当てで自殺をそそのかしたとみて、捜査を続けている。
(AERA dot.編集部・今西憲之)

