
「みなさんお好みで選んでいます。北海道のものは甘みがしっかりしていて、癖がありません。茨城在来は豆の味わいがあって豊かな香りが特徴です」と堀井さん。賞味期限は5日間。
「趣味で作ってるんじゃないかと言われることがありますけど、必死で作ってます」
豆の状態に合わせて
豆腐を作る日は、12時間ぶっ通しで仕込む。まず豆を水に浸すのだが、品種や豆の状態によって、水の吸い加減は違う。豆の状態に合わせて、浸かり具合、にがりの量、水温を見極める。
筆者も冷ややっこを食べた。濃厚な豆乳をそのまま豆腐にした味わい。舌の上でとろけた。
ショーケースには季節の総菜も並ぶ。近くの八百屋や肉屋で買った食材で、桑原さんが作る。
「手土産に豆腐を買う方もいますし、初めての離乳食に食べさせたいと言ってくださる方もいます。西荻のお客さまに育ててもらっています」(桑原さん)
前出の工藤さんに、いつもの豆腐をよりおいしく食べる方法を教えてもらった。
「温度管理はぜひ実践してみてほしいと思います」
湯豆腐はグツグツ煮込むと硬くなる。豆腐がふわっと浮き上がってきたら引き上げて、少し置いてから食べるとちょうどいい。温まったら火を消して、ふたをして保温するのもよい。
冷ややっこは冷蔵庫から出したてよりも、20~30分置いた方が豆腐本来の味を楽しめるという。
「大豆は日本だけでも約300種類あります。違う地域の大豆だったら味が違うのかなとか、知れば知るほどお豆腐への興味が湧いてくると思います」
筆者は豆腐嫌いを克服した。
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2025年3月17日号より抜粋

