豆腐マイスター:工藤詩織さん(33)(くどう・しおり)/幼少期から豆腐好き。著書に『まいにち豆腐レシピ』。2024年、東京・日本橋人形町に「豆腐屋料理店 四方八方」を開く(写真:本人提供)
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 健康志向が高まりから、手軽なタンパク源として見直されている豆腐。“進化系”から豆腐らしさに磨きをかけたものまで登場している。豆腐が苦手という記者が最新豆腐事情を取材した。AERA 2025年3月17日号より。

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 豆腐マイスターの工藤詩織さんに、おすすめ品を聞いてみた。

「お豆腐が好きではない人にも、『一度買ってみよう』と思わせるお豆腐が出ています」

「ザクとうふ」などで知られる相模屋食料(前橋市)には、まるでウニのような豆腐もある。「ビヨンドとうふ」というシリーズで、そのまま食べてもいいし、パスタに和えてもいい。

 進化する豆腐がある一方、豆腐らしさを守り続けながらアップデートする豆腐もある。

「『箱入り娘』を作る太子食品工業(青森県)は、研究熱心な会社です。衛生管理を徹底したことで賞味期限を13日間に延ばしました」(工藤さん)

 さらに、常温で長期保存できる豆腐もある。徳島県の「さとの雪食品」は製造日から5カ月も持つ豆腐を出した。酸素と光を遮断する個包装パックに入れ、非常食にできるタンパク質としても人気だという。

 街の豆腐店にも勢いがある。

「グルテンフリー、ベジタリアンなどのトレンドがあるなかで、お豆腐のポテンシャルに目を付けた人たちが店を始めました」(同)

 神戸にあるYACCO豆富店のパッケージはカラフル。雑貨のようだ。

希少な在来種を使って

「トウモロコシ入りのお豆腐もおいしいですし、昨年秋に食べたイチジクが入ったお豆腐は、プチプチとした種の食感がありました。飲食業から転身したお店の方のセンスを感じます」(同)

「東京でも女性2人の素敵なお豆腐屋さんがありますよ」

 工藤さんからそう聞いて訪れたのが、西荻窪の「まめなとうふ店」だ。

 店構えは、あたたかみのある木のデザイン。手前のショーケースに豆腐が並び、奥には豆腐を作る厨房(ちゅうぼう)が見える。

 やってきた客は「北海道、絹で」と注文していた。

 店主は、都内の老舗豆腐店の同僚だった2人。豆腐担当の堀井尚子さん(38)と総菜担当の桑原有子さん(55)が、19年にオープンした。

 使う大豆は、国産大豆のなかでもより希少な在来種。北海道音更大袖振(おとふけおおそでふり)と茨城在来の2種類。1丁334円。

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