
東大というと、各高校からの合格者数ばかりが注目されがちだが、どのように受験に挑み、東大で学び、将来につながったのか、実際の話も知りたいところ。そんな期待に応える一冊が出た。AERA 2025年3月17日号より。





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東大卒を隠して生きてきた大宮エリーさんが、東大出身の著名人20人と語り合った新刊『大宮エリーの東大ふたり同窓会』。東大を選んだ動機や合格法、大学時代に過ごした時間が人生をどのように形づくっていったのかをまとめて読むと、真の東大の姿が浮かび上がってくる。
「東大に入って、こんなにもレールに乗ってきた人がいる場所なのかって驚きました」と語ったのは、僧侶の松本紹圭さん(2003年、文学部哲学科卒)。北海道小樽市の漁村の出身。塾にもいかず、独学で現役合格した。高1のときに赤本を買ってきて、「3年後にこれを解けるようになる」ことを目標に“合格までの千日間のプラン”を立て、合格をつかみとった。「道は作ればいいんだって手ごたえを得られたのが東大受験の一番の収穫」と松本さん。自ら道を切り開くように、継ぐ寺もないのに“お坊さん”になり、インドにMBA(経営学修士)留学し、仏教界の構造改革を進めている。
ギャフンと言わせたい
前兵庫県明石市長の泉房穂さん(1987年、教育学部卒)も漁村の出身。塾も行かず、過去問も買ってもらえず独学で入学した。「入ってみたら(親の年収が)1千万、2千万円選手のお嬢さんとお坊ちゃんたちばかり」「私の分析では東大は『過去問主義』やわ。前例主義。過去問がないと動けなくなってしまう」と語った。
タレントの高田万由子さん(94年、文学部卒)も独学で東大合格をつかんだ一人。学校の先生に、東大は「無理よ」と言われて「ギャフンと言わせたい」と思ったのが高3の10月。そこから夜9時から12時までは電話も出ず、トイレにもいかず勉強だけに打ち込んだ。
試験を作る教員と受験生をつなぐものは「教科書」だからと、ひたすら教科書を読み、「過去問の分析がカギを握る」と解説文を読みこんだ戦略が奏功した。