ベルギーのフィリップ国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会に臨む皇太子妃雅子さま(当時)。リバーレースで仕立てたドレスをお召し。花の意匠部分にはビーズやスパンコールが手縫いで一面に縫い付けられており、豪華さを引き立てている=2016年、皇居・宮殿

 皇太子妃時代、ベルギーのフィリップ国王夫妻を歓迎した16年の宮中晩餐会では、リバーレースにスパンコールとビーズを手縫いで縫い付けられた豪華なイブニングドレスをお召しだった。

 雅子さまのレースの装いは、ドレス以外にも見ることができる。

 23年6月に両陛下がインドネシアを訪問した際には、刺繍レース(エンブロイダリーレース)のロングジャケットをお召しだった。

 スタイリッシュな雅子さまのイメージに近い、幾何学模様のレース生地だ。

「直線の刺繍で幾何学模様の柄を描くレース生地も、昔からある王道の柄のひとつです。設計図次第でいかようにも描くことができるのもリバーレースの魅力です」

 澤村さんによると、幾何学模様のレース生地は東南アジアで好まれる柄。インドネシアという訪問先に雅子さまが配慮されて、選ばれたのかもしれない。
 

24年春の園遊会に臨む天皇陛下と皇后雅子さま。雅子さまの胸元を繊細なリバーレースが美しく彩る。2万本の糸で織り上げるリバーレースは、花の影すらレースで表現できるという=2024年4月23日、東京・元赤坂の赤坂御苑、JMPA

国ごとに異なるレースの柄をお召し

 今春の園遊会でも、このレースを愛用されている。

 お召しであった淡いグリーンのジャケットのインナーが、リバーレースだ。生地の端には、リバーレースの特徴であるまつ毛のような糸(アイラッシュ)が見える。

 およそ2万本の糸で織り上げられるリバーレースは、花弁や蔦の陰影すらレースで表現することができる奥深さがある。「栄レース」でも、機械を扱えるようになるまでに1年以上の歳月を要し、「職人の世界と言ってもいい」と澤村さんは話す。
 

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